2015年12月14日月曜日

マクドナルド大量閉店から考える、ある医療法人の倒産

「いままで通っていたクリニックがなくなってしまったんです」と言って受診される患者さんがときどきいらっしゃるのですが、みな一様にクリニックがなくなった理由がわからないといいます。新宿区(もっと大きなくくりで東京?)という場所柄なのか、はたまた医療崩壊が始まったのか…閉院あるいは休院した理由がわかるクリニックもありますが、一番の問題は医療と経営のバランスが難しいからでしょう。

とある医療法人は短期間の間に大きな医療クリニックを立て続けに開院したために、負債10億円で倒産したようです。昔は、医院や診療所(敢えてクリニックとは呼ばない)と言うと住宅街にぽつんとあったものです。私の祖父や祖母もそのような形態で開業していました。とくに商店街でもなく職住一体となった建物で、いわゆる「かかりつけのお医者さん(町医者)」でした。時代が進み、駅や商店街の近くの目立つところでクリニックを設立することが当たり前のようになり、医療コンサルタントと称する人たちによる「いわゆる一般的な商業的な経営理念を少しだけ医療向けに置き換えた経営スタイル」を模倣するクリニックや薬局のバックアップのもと医療モールで開業するという形態が中心となっています。

話は変わって、つい最近マクドナルドが経営不振による大規模な店舗閉鎖をおこないました。今回閉店した店舗が赤坂見附、六本木、池袋西口、駿河台などいつも混雑している店舗ばかりで、「なぜ閉店するのか」とツイッターなどSNSで疑問の声が上がっていました。これらの店は私も利用したこともあるのですが、昼時以外でもレジは長い行列でとても混んでいた印象があります。こんな一見流行っているようにみえる店舗が閉店に追い込まれたのは、「いくら高収益であっても人件費や家賃の高騰があるために黒字化が難しい」という切実な理由があったようです。とくに東京は2020年のオリンピックなどのイベントに加えて、海外からの観光客の増加や、TPPによる関税撤廃と円安による海外資本の流入により、家賃や物価もいままで以上にどんどん上昇していくでしょう。

この話と医療がなぜ関係しているのかというと、いま医療経営で成功の条件(私は違うと思っていますが)と思われている経営手法と関わりがあるからです。10億の負債をかかえた医療法人も駅ビルや駅前のモールに診療所を構えており、立地の良さからは高収益が期待されたと思われます。さらに最新の医療機器を備え、非常勤医師を多数雇っていたようです。綺麗な施設と最新の装置…私もそのような施設で仕事ができたらどんなに良いかと思います…が、実際に経営の立場から考えると非常に大変なことに気づきます。どんなに高収益であっても、駅前や新しいビルの家賃は更新のたびに高騰していきますし、非常勤医師をひとり雇うたびに1日あたり何十人もの多くの患者さんを診察しなくては、バイト料に見合った収入が得られません。そのために集患のための広告費はかさみ、診察が混んでくると看護師や事務員さんも増員しなくてはならなる…収益のために出費がかさむジレンマに陥ります。そうなるとせっかく地域医療のためにと開業しても診察のためではなく、経営のための自転車操業になってしまうのです。破産した医療法人は短期間のうちに複数のクリニック経営を展開するなど誤った選択をしてしまったのも問題なのでしょうが…。

それこそマクドナルドが「高収益でも黒字化が難しい」と大量閉店をおこなったように、医療の世界でも立地や集患だけでなく、地に足の着いた経営計画が求められていく時代になっているのでしょう(大変です)。とくに東京など大都市圏は人件費も家賃も高いため、今後もクリニックや医療法人破産のニュースが増えるかもしれません。これからは周囲(誰とは言いません)の甘いささやきや誘惑に惑わされることなく、背伸びをしないクリニック作りが大事なんだと思いました。うちは…街なかに地味にひっそりとやっている小料理屋のようなクリニックを目指しています。


2015年11月29日日曜日

Spike Wilner Trio - Live at Smalls

ニューヨーク、ウェスト・ヴィレッジ・7thアヴェニュー・サウスにあるジャズクラブ「Smalls」の共同経営者であり、ピアニスト、作曲家、ジャズ研究家など複数の肩書をもつスパイク・ウェルナーのトリオ盤。

トリオといってもピアノ、ベース、ドラムではなく、ピアノ、ベース、ギターであり、アート・テイタム、ナット・キング・コール、オスカー・ピーターソンなどでみられた、1930〜40年台あたりの古典的な編成である。このドラムレス・トリオはスパイク・ウェルナーの「ピアノが主役。ドラムやヴォーカルは入れない。」という経営方針にも現れているようです。アルバムではベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章やスコット・ジョプリンの「マグネティック・ラグ」からジェローム・カーンやコール・ポーターのミュージカル曲(ジャズ・スタンダードとして知られた曲)をpopular themeとして変奏曲にしたりしています。ピアノは雄弁に語りかけたり、音の強弱を奏でたりすることなく、控えめな音と少ない音数でリズミカルに演奏しています。ピアノソロに優しく寄り添うベースとギターはときに絡みつくように音を重ねていくさまは非常に心地よく感じます。

クリニックのBGMとしても主張し過ぎず、うるさ過ぎずで最適です。クリニックには小さい子供から高齢の方まで受診していただいているため、(音楽的には卓越していたとしても)新しいジャズやコンテンポラリー・ミュージックは音が先鋭的になりやすいためBGMになりにくいのですが、このアルバムならいろいろな年代の人に楽しんでいただけるのではと思います。

ディスクユニオンのエサ箱(セール品ですごく安かった)にあったもの購入したのですが、とても聴き応えのあるアルバムでした。冬の夜なんかに最適の1枚です。




2015年11月24日火曜日

グラッシュビスタやザガーロはなぜ高いのか?

 今回は保険適応外治療として使用されている自費診療で処方される薬について考えてみました。皮膚科領域で現在、自費診療で発売している薬剤としては、「プロペシア(ジェネリックのフィナステリドも含む)」、「グラッシュビスタ」があり、発売延期となりましたが「ザガーロ」もその仲間です。
 
 これらのなかでも「グラッシュビスタ」はまつ毛貧毛症、「ザガーロ」は男性型脱毛症(AGA)の薬として使用されます。点眼液と内服薬の違いがありますが、いずれも「ルミガン点眼液」、「アボルブ」という他の疾患に対する薬剤があります。「ルミガン点眼液」は緑内障・高眼圧症に対して保険適応がある点眼液です。まつ毛にこの点眼液が付着することでまつ毛が伸びたり、太くなる副作用が知られており、まつ毛を伸ばす目的で以前より美容クリニックなどで処方されていました。一方、「アボルブ」は前立腺肥大症の治療薬ですが、AGAの原因である5α-還元酵素Ⅰ型・Ⅱ型とも阻害するため、既発売である「プロペシア」(フィナステリド;Ⅱ型還元酵素のみ阻害)よりも治療効果が期待できると、泌尿器科・内科、AGAクリニックなどで処方されていました。

 これらの薬に共通しているのは、本来の目的以外の治療効果に対して使用している点です。一般的に保険適応外と呼ばれるものは、海外では保険適用であっても本邦では未承認、あるいは治療効果については実証されていても認可されていない薬剤を使用することを指します。「ルミガン点眼液」によるまつ毛育毛や「アボルブ」によるAGA治療も大きな括りで言えば保険適応外となります。

 このような薬が保険適応拡大ではなく、自費診療としてこれらの薬を(名前を変えてまで)発売することに至った経緯には幾つかの理由があると思います。①日本は高齢化社会となり医療費が逼迫している、②まつげ貧毛症やAGAの治療に医療保険を使うことで医療費がかさむことが予想される(これは保険を使用して治療を必要とする疾患か否かという意味合いもあると思います)、③保険適応外にも関わらず、保険病名として「緑内障」や「前立腺肥大症」と記載して処方する(これは違法です)ことが少なからずあるため、④保険適応外で使用した場合、重篤な副作用になった場合、医薬品副作用被害救済制度を受けられない(逆に言うと高額であるが「グラッシュビスタ」や「ザガーロ」は救済措置を受けることができる)、などが考えられます。

 ①②は医療費40兆円/年を超えることや、診療報酬改定のニュースが話題となっているため理解しやすいと思います。率直に言って、まつ毛貧毛症やAGAは命に関わるものではなく、かならずしも治療しなくてはいけない疾患ではない…ということを意味しているのでしょう。どうしても治療をしたければ自費でという流れです。

 ③は自費だと患者さんの費用負担が大きいので優しさで処方してあげる…と言うと聞こえは良いですが、保険診療でこれらの薬を処方し続けることは違法(厳密に言うと健康保険法違反)です。摘発されるリスクを犯しながら処方を続けることはできません。

 ④は副作用がない限り問題ないと思われがちですが、インターネットで並行輸入の医薬品を購入したり、院内処方で「ルミガン点眼液」や「アボルブ」をまつ毛貧毛症やAGA治療目的で購入した場合、それらの薬で問題が生じた時に保証されません。このことをどれだけのひとが理解しているのか、そのリスクを承知して購入しているか心配です。皮膚科医はスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤過敏症症候群(DIES)などの重症薬疹(重篤な副作用)で苦しんできたひとを何人も診療しており、今まで報告がなくてもどのような薬剤でも重症薬疹を引き起こすリスクがあることを知っています。だからこそ、副作用で薬疹になったときに救済措置ができる「グラッシュビスタ」や「ザガーロ」を処方することで、このようなリスクを回避ができるようになったことは非常に大事だと思います。

 ただ…金額設定はどのようにしておこなわれているのか、どうしてこの値段になのか?というところはわかりません(「ザガーロ」は「プロペシア」の1.6倍の効果があると宣伝しているので、仕入れ値も1.5倍ぐらいになっている?)。並行輸入や保険適応外処方(院内処方を含む)と張り合う値段とまではいかなくても、もう少し購入しやすい価格というのは検討されていなかったのでしょうか…薬剤には使用期限があるため、在庫を抱えるのは良くないですよね。


2015年11月17日火曜日

プロトピックで催奇形性?

あっという間に11月になり、2015年もあと少しとなってきました。クリニックはゆっくりにながら成長を続けている…はずです。これもひとえに受診していただける患者さまや支えてくれる家族・スタッフの方のおかげと感じています。

今回も皮膚科の話題をひとつ。プロトピック®軟膏についてです。一般名はタクロリムスといい、アトピー性皮膚炎に対して保険適応がある外用剤です。タクロリムス水和物は茨城県筑波山付近で採取された放線菌(Streptomyces tukubaensis)の代謝産物である免疫抑制剤で、経口薬(先発品はプログラフ®)は臓器移植・骨髄移植の拒絶反応や関節リウマチの治療で使用されてきました。その外用剤がプロトピック®軟膏となります。

プロトピック®軟膏は1999年(小児用は2003年)の発売からいろいろな論文により翻弄されてきた軟膏でもあります。①長期間外用するとリンパ腫(皮膚癌)になる、②催奇形性や胎児奇形の心配がある…などです。こんな話を聞かされれると外用するのが怖くなってしまうのですが、①②ともにちゃんとした解答があり、医師がきちんと使用方法を説明し使用方法を正しく守って外用すれば安心して使える外用剤なのですが、いまだにHPやブログの記事やYahoo知恵袋などの回答で「使用するのは危険」と書かれており、ちょっとかわいそうに思います。

①は「タクロリムス軟膏のマウス2年間塗布試験」が発端です。この実験では「タクロリムス軟膏を1日1回、2年間にわたり塗布した結果、タクロリムス血中濃度が上昇し、リンパ腫の発現が有意に上昇した」ものでした。この結果だけでは確かに皮膚癌リスクが高いかも…と思うのですが、マウスの皮膚はヒトよりも100〜200倍薄いため薬剤の吸収率が高くなること、マウスの寿命が約2年であるため、一生かけて塗布していること、マウスのリンパ腫発生頻度が高いことなどのバイアスがあり、現在ではヒトではそのようなリンパ腫を起こす血中濃度にはならず、癌の発生率も自然発生率と変わらないという論文が数多くあります。しかし、その後も小児の不適正な長期使用例で発癌率上昇の可能性の報告もあり、医師がプロトピック®軟膏の特性について理解せず処方することは非常に危険です。



②は「タクロリムスを経口投与したうさぎの実験」で催奇形性や胎児奇形の報告があり、プロトピック®軟膏に対するものではありません。しかし、薬剤師の方でも「長期外用により催奇形性や胎児奇形がおきる」と誤解されている方もまだいらっしゃるようで、「薬局で催奇形性のある薬剤と言われた」と患者さまから教えてもらうこともあります。短時間でいろいろ説明するため、簡潔に伝えるのは難しいのかもしれないですが、殊更に不安を煽るようなことはしないほうが良いのでは…と考えてしまいます。


プロトピック®軟膏は使用方法を熟知したひとが説明すれば、ステロイド長期投与による副作用を軽減できる外用剤なので、処方する側が説明をしっかりしていかなくてはと思います。(プロトピック®軟膏の利点・欠点もあるので、それは別の機会に説明します)





2015年10月30日金曜日

酒さの原因はなに?リスク回避法は?

本当に久しぶりのブログです。今回は皮膚科らしい学術的なお話をしたいと思います。

「酒さ」は血管拡張することで鼻や顔が赤くなり、あたかもお酒を飲んだような赤い顔になってしまう病気です。進行するとにきびのような赤い丘疹ができ、なかなか治らない慢性疾患としても知られています。当クリニックでは酒さ治療としてロゼックスゲル®(メトロニダゾール)外用などを含めた内服・外用治療ならびにをおこなっておりますが、根治に至ることが難しい疾患でもあります。

そんな「酒さ」はどんな原因でできるのか…そんな疑問に答えてくれる論文が最近発表されたので、エッセンスをお伝えしたいと思います。JAMAというアメリカの著名な皮膚科雑誌に掲載された論文で、18〜80歳までの一卵性双生児233組、二卵性双生児42組を対象に病歴と生活習慣についての調査をおこない、その結果をコホート研究(疾病発生と要因の関連性を調べる観察的研究のこと)にてまとめています。

結果を簡単にまとめると、46%が遺伝に関与しており、生活習慣では紫外線暴露(日焼け)、加齢が大きく相関しています。その他、肥満(BMI)、喫煙、飲酒、心疾患、皮膚がんなども関連しているそうです(肥満、心疾患の因果関係ははっきりしていません)。

「酒さ」は遺伝や加齢が大きく関与している疾患ですが、日焼け、喫煙、飲酒などの生活習慣を改めることでリスク回避できる可能性があります。もし「酒さ」と診断された、あるいは家族に「酒さ」と診断された人がいる場合、日焼け、喫煙、飲酒を控えることが大事です。

[参考文献]
N. Aldrich: Genetic vs Environmental Factors That Correlate With Rosacea: A Cohort-Based Survey of Twins: JAMA dermatology. 2015



2015年9月8日火曜日

雨の日のカノン

このところずっと雨が続いており、今年の夏はあっという間に過ぎていったようです。今日・明日は台風の影響もあり、時折強い雨が降っています。こんなに雨の日が続くと少し気が滅入るのですが、午後は久々にアン・バートンを流してまったりとしています。

今日の話題はアン・バートンではなく、パッヘルベルのカノンです。この曲も演奏スタイルによってはかなり変化があるのですが、弦楽オーケストラでゆったりと奏でるカノンは優雅でありなんとも言えない心地よさがあります。

そんなパッヘルベルのカノンで一番ゆっくりと演奏しているのは?と考えると…ゆっくりで有名なのはパイヤール盤なのですが、知りうる限りでは、ドゥアッテ盤が一番ゆったりとした演奏だと思います。9分2秒という時間をかけて間延びしないように丁寧に演奏しているこの演奏は、パイプオルガンで奏でているような通奏低音が印象的です。いつもはイル・ジャルディーノ・アルモニコのようなスッキリとした古楽アンサンブルを好むのですが、今日のような雨のまったりした午後にはゆっくりしたドゥアッテの演奏が恋しくなります。

指揮者のローランド・ドゥアッテはウィキペディア(フランス語)によると、フランスのヴァイオリニスト(独学!)・指揮者で、パリ・コレギウム・ムジクムを設立し、数多くのバロック音楽を録音しているようです。

この演奏が収録されているCDは、Accordレーベル原盤なのですが、なぜかオーリアコンブ(著名なフランスの指揮者)のバロック音楽名曲集の中に1曲だけドゥアッテ指揮のパッヘルベルのカノンが入っています。きっと一番ゆったりとしたカノンだと思います。






2015年8月5日水曜日

幼なじみが近所にやってきた

先日、久しぶりに自分のフェイスブックをみてみたら、小中学校の同級生がクリニック近くのお蕎麦屋さんで働き始めるという投稿が!最近…というかもともとSNSが苦手なのか…ここ何年かはフェイスブックはほとんど使用しておらず、インスタグラムもぼちぼちという感じでしたが、告知などでは役立ちますねーSNSって。たまには見るものですね。

というわけで、本日のお昼に早速行ってきました。お店はお堀を渡った九段南にあるのですが、新見附橋をわたって一口坂にまっすぐ進むといけるので意外と近いです。もともと好きなお蕎麦屋さんなので、お昼休みの運動がてらにちょっと行こうと…なったのですが、この連日の猛暑で移動だけでふうふうでした。

お蕎麦はいつもどおり美味しくいただきました(グルメブログではないので余計なことは書きません)。幼なじみが厨房で働いているのを見るとちょっと不思議な感じです。「◯◯くんは頑固でこだわりがあるんだよ」と一緒に食べている奥さんに行ったところ、「それはあなたもおなじでしょ」と言われてしまいました。分野は違ってもこだわりをもっていくことは大事だよね。また食べに行きます。


2015年8月3日月曜日

雑誌で名医になれる金額って?

7月もあっという間に終わってしまいました。最初はゆっくりだった患者さんの流れも後半になるにつれて安定し、終わってみれば220名以上の新規患者さんに来ていただきました。患者番号もいつの間にか2400番を超えました。皆さまありがとうございます。

いまやクリニックや診療所は飲食店や店舗と同じく「集客」ならぬ「集患」対策をとらないといけない時代になっており、古典的な電柱広告、看板に始まり、雑誌・本などの紙媒体やネットなどの「集患」アイテムがあります。ただ医師法というしばりがあり、好き勝手に宣伝できるものではないのですが、条件をクリアさえすれば「集患」できます。

10年ほど前はホームページ作成や病院検索と称した口コミ風サイトが全盛でしたが、最近は元気がなさそうです。その後、インタビュー形式のサイト(無料でできるものから高額請求があるものまで)があったのですが…最近ではどうなのでしょう?開院すぐにインタビュー受けたものがありますが、アナリティクスで動向を確認してもほとんどアクセスやリンクへのアクセス誘導の役目をしていないようです。やっぱりなと思っています。また根強いものとしては紙媒体があります。女性誌・情報誌の特集ページや名鑑などがあり、開業するまでは医学誌の依頼原稿(選考委員の先生方から推薦を受けて原稿を書くことです。微々たるものですが原稿料がもらえます)のように先生方からの推薦を受けているのかと思っていたのですが、実際は医療レベルと関係なくシビアなビジネスの世界でした。

特集記事やインタビュー形式であるとページあたり何十万円(80万円ぐらいが多い?)というものから数万〜10万円前後の医院紹介まで、細かく分類されています。大手出版社の有名な雑誌でも聞いたことのない出版社でも金額に大きな差はないので、一般的な価格というものがあるのでしょうが、(おそらく多くの場合)自薦なのがちょっと…寂しい気がします。開業当初は有名雑誌の記載の入ったFAXや封筒が届くたびに「どうしようかなー」と一喜一憂していましたが、開院したてなのに依頼があまりに多く、内容もみな同じようなので宣伝なんだと理解して、いまはゴミ箱行きにしています。

なぜこんなこといま書いているかというと、先日も雑誌掲載依頼の手紙が来て、そこに掲載するための金額が思ったよりも安くて一瞬「載せてもいいかな」と思ってしまったからです。こういう商売って上手いところを突いてくるんだなーと感心してしまいました。


2015年7月10日金曜日

旧友に出会う偶然とインプロヴィゼーション

7月はずっと梅雨空の雨続きでしたが、今日は晴れ間も出て夏を予感させる暑い一日になりました。本日は大学の外来もなく帰宅していたところ、突然声をかけられて振り向いたところ、外国に住んでいるはずの幼なじみがいてびっくり。小中学校が一緒で、研修医のときに同じ病院で研修したので十何年に一回は再開している計算ですが…夏休み期間で日本に帰っているとのこと。こんな偶然びっくりですが、天文学的確率…というわけでもないのでしょうか。

音楽での偶然性はジョン・ケージという戦後に活躍した現代作曲家(この言葉は20世紀的な観点からのです)が提唱していますが、そんな「偶然性の音楽」には興味がなく、ジャズでいうところの「即興(インプロヴィゼーション)」が相応しいかな?インプロヴィゼーションというとかつてビル・エヴァンスがマイルス・デイヴィスのアルバムのライナーノーツに「ジャズとインプロヴィゼーション」という文章を寄せていて、その中で「日本絵画」を「インプロヴィゼーション」と類推するという内容を思い出します。そんなビル・エヴァンスのアルバムでは《アローン(アゲイン)》はインプロヴィゼーションにあふれた名演だと思います。リリカルでありつつもささやかな咆哮と即興性にあふれたピアノ・ソロはとても心地よい時間を与えてくれます。



2015年7月8日水曜日

いちばん美しいピアノ曲はなに?

梅雨空が続いています。クリニックは混んだり、空いてたり読めない状況です。のんびりいきましょう。いちばん美しいピアノ曲(クラシック)は?と聞かれると答えるのが難しいのですが、全体的な雰囲気がよいのと、ひとつの旋律だけでなく曲全体が美しくまとまっている曲…と考えると、最近のお気に入りはプーランクの《メランコリー》です。

プーランクは20世紀初頭から中期に活躍したフランスの作曲家で、フランス6人組と呼ばれるグループの中で一番有名なひとでもあります。「フランスのモーツァルト」(フレーズだけは「浪速のモーツァルト」キダ・タロー先生に似てますが…)とも言われ、洒脱な曲が多く、ヒッチコック監督の「ロープ」という映画でも3つの常動曲が使用されています。この「ロープ」という映画は1948年当時としては画期的なゲイを示唆する描写が多く、さすがヒッチコックとニヤリとさせられます。

プーランクはちょっとうるさくって不協和音があって聴きづらい曲とすごく甘くてとろけるような曲の落差が激しいのですが、《メランコリー》は6分間を通して同じフレーズを転調しながら漂うように甘美な音色を奏でるのですが、長調なのに全体的には悲しげな曲調になっています。これはプーランクの親戚・友人の死や第2次世界大戦の暗い影を反映しているとも言われますがどうなのでしょうか?

ポール・クロスリー、エリック・ル・サージュ、アレクサンドル・タローいずれも甲乙つけがたい名演ですが、ドビュッシーやラベルではさらりと即物的な印象のピアノを聴かせるポール・クロスリーの思いの外しっとりした演奏が最近のお気に入りです。


2015年7月2日木曜日

梅雨の日のピート・ジョリー

6月は200名を超える新規受診の方々がいらしていただき、ようやくクリニックらしくなってきたかなと思っていたところ…今日はいつも以上にのんびりです。なでしこジャパンの試合もあったし、天気も悪いし…などと考えるのはやめておきます。

今年の梅雨は梅雨らしく(?)、小雨のぐずついた天気が続いています。そんな日のBGMはどうしようかと考えてしまうのですが、ピート・ジョリーの軽妙で明るいピアノが良いのではと"Sweet September"というアルバムなどをかけています。ピート・ジョリーは、ウエストコースト・ジャズと呼ばれる西海岸で演奏されていた白人系ジャズの代表的なピアニストで、かつては「幻のAVA盤」と呼ばれたらしいピアノ・トリオ盤です(いまだとApple Musicなどでも聴けます)。このアルバムから聞こえる音は、あらゆる点で輝いていていた1950年代のアメリカを想起させる明るい響きと懐かしさが混在して心地よい時間を与えてくれます。

今日の午後に期待しましょう。





2015年6月27日土曜日

医療機関とJASRACとマルグリュー・ミラー

今年の6月はブログを書くことができないまま終わろうとしてます。7月は少しでも多くかけるように…なるでしょうか?

最近の気になった話題の一つにJASRACの使用料未払いに対する法的措置がありました。日本では店舗でCDや配信音源などの録音音源をBGMとして使用する際、JASRAC(日本音楽著作権協会)に使用料を払わないといけないという取り決めがあるのですが、今月に入り使用料未登録の店舗・施設に民事調停の法的措置を取ったというニュースが流れて俄然注目を集めました。医療機関で流すBGMも使用料が必要かというと…福祉・医療機関はいまのところ教育機関とともに「使用料を免除する施設」であるため必要ないのですが、クリニックは使用料が必要なのかな?とサイトを確認してしまいました。クリニックのBGMについてブログに書いてきているので、この使用料問題がどうなっていくのか気になるところです。

音楽に話題を変えると、大好きなピアニスト・マルグリュー・ミラーの命日が5月29日だったことをすっかり忘れていて、今頃になって思い出したかのように彼のアルバムを聴いてる毎日です。最近良く聴いているのは、2000年に入ってからマルグリュー・ミラーのアルバムをコンスタントに出してきたMAXJAZZレーベルの2005年作品で、アメリカ西海岸のライブスポットYoshi's(名前の通り日本人経営のライブハウスです)でのキレキレのライブ第2弾(LIVE AT YOSHI'S VOLUME 2)です。1曲目の《Joshua》から切れ味鋭くも音がとてもきれいで粒立ちの良いピアノを聴かせてくれます。ライブでのマルグリューは大きな背中から湯気が立ち昇るほどの熱気と風貌から想像できないような繊細なタッチと美しい旋律を奏でていたのを思い出させます。5曲目《One's own room》のようなコンテンポラリー的なものでも聴きやすく、ロバート・グラスパーの最新アルバムに通じる歌謡性を感じます。




2015年6月9日火曜日

雨の日のアン・バートン

先週土曜日にカルテ番号が2000番に到達しました。まだまだゆっくりとした歩みですが、1年2か月で到達できたことに感謝しています。これからも丁寧な診療を心がけたいと思います。

5月の暑かった日々が一段落…という間もなく梅雨入りしました。最近はいろいろな年代のひとにも聴きやすいBGMをと考えて選曲していますが、雨になるとついつい選びたくなるのはアン・バートンです。おそらく「雨の日と月曜日は」というカーペンターズの曲をアレンジしたアルバム(タイトルも「雨の日と月曜日は」)のイメージなのかもしれないのですが、アン・バートンのしっとりとしたバラードは雨の日にぴったりなのです。

今日のBGMは彼女の初期作品を流しています。同郷(オランダ)のルイス・ヴァン・ダイクのピアノはとても繊細で、アン・バートンの低い声でささやくような歌声と絶妙に絡み合います。こんな雨の日はアン・バートンのゆったりとしたバラードが心地よいです。


2015年6月3日水曜日

ロバート・グラスパー・エクスペリメント(Billboard東京公演)

先週末は金曜午後より土曜にかけて、パシフィコ横浜で開催された第114回日本皮膚科学会総会に参加してきました。土曜の休診が上手くお伝え出来ていなかったところがあり…ご迷惑おかけしてしまってすみません。いまの皮膚科のトピックスは遅まきながら皮膚悪性腫瘍や尋常性乾癬の分子標的治療薬、遺伝子解析といったところでしょうか?

一口に学会と言っても、皮膚科で例えると一番大きな総会(年1回)から支部総会(東部・中部・西部・東京)、地方会、研究会と多岐にわたります。ちなみに皮膚科の地方会は東京支部で年6回(ちなみに放射線科は関東・甲信越で年2回)あります。昨年は開業したばかりでばたばたしていたのでなかなか学会参加できませんでしたが、今年は少し余裕を持って参加してこようと思ってます。

昨日は診療が終わってからすぐにBillboard東京へ。昨年に引き続きロバート・グラスパー・エクスペリメントの東京公演にいってきました。ロバート・グラスパーはジャズだけではなくR&Bとしてグラミーを受賞するほど多岐にわたる活躍をしているピアニスト。昨年はサマソニ後ということもあり、ノリノリ系を期待して行ったところクールで繊細なサウンドでちょっと肩透かしでしたが、今年は期待以上に楽しめました。昨年は彼が敬愛するハービー・ハンコック寄りとすると、今年はより叙情的なピアノで、高校生のグラスパーにピアノを指導したマルグリューに近い響き。

グラスパーばかり話題にしてしまうのですが、エクスペリメントはケイシー・ベンジャミンがフロントでヴォコーダーとサックスを変幻自在に操るところも忘れてはいけません。昨日はドレッドヘアーをとさかのところが赤いリーゼントにして決まっていました。さらにベースのデリック・ホッジ(マルグリュー・ミラーの寵愛をうけたベーシスト)、ドラムのクリス・デイブも気持ち良いサウンドを聴かせてくれました。

そうそうグラスパーは観るたびに大きくなっているようで…すでにオスカー・ピーターソンを通り越してマルグリュー・ミラーばりになってました。


2015年5月24日日曜日

すべては野茂英雄からはじまった。Number877

5月もあっという間に最終週になってしまいました。今週末は年に一度の皮膚科学会総会(一番大きな学会)が横浜で開催されます。今年は講演もなく、ゆっくりと参加しようと思っています。

クリニックはおかげさまでカルテ番号が1900を越えました。3月に1500台になってから約2か月でここまで順調にこれたのは患者さま、スタッフ、家族に支えていただいたからと思っています。少しずつですが市ヶ谷の皮膚科として認識していただけるようになってきたかな?と感じています。これからも丁寧な診療を心がけていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

今日は珍しく野球の話題です。最近はめっきりと観ることが少なくなった野球ですが、20年ほど前は野球場に足を運んだり、テレビで楽しんだりしていました。後楽園球場の近くに住んでいたため野球場は身近な存在であり、球場の独特な熱気をいつも肌で感じて過ごしていました。その中でも野茂英雄という存在はアメリカメジャーリーグ(MLB)のパイオニアとしてはもちろん、独特のフォームや寡黙で羨ましいほど野球を愛してやまない姿勢(良い意味での野球バカ)、自分にはないところをたくさん持つ存在として敬愛する野球選手のひとりです。

デビュー年である90年4月29日の1試合17奪三振(オリックス戦)に始まり、あの独特なトルネード投法は20年以上経ったいまでも鮮烈に覚えています。その後、95年にロサンゼルス・ドジャースでの初登板、コロラドやボストンでのノーヒット・ノーラン、野茂のホームラン(彼こそがMLBで初めてホームランを打った日本人です)などなど、その瞬間をライブで観ていたことを思い出されます。唯一の心残りは、96年夏にろロサンゼルスに留学中の姉夫婦のところに遊びに行った際、ドジャー・スタジアムに観戦に行った日が野茂の登板した次の日だった…という点です。ノモフィーバーに湧くスタジアムで観戦したかったな。

遅ればせながらNumber877を読ませてもらって、引退直後にでたNumber714での野茂英雄のインタビューと比べてもいまだ衰えることのない野球の情熱がひしひしと伝わってきて、本当に素晴らしい野球バカだなとおもいました。私も医療について飽くなき診療バカでいつづけられるのか…これはとても大事なことです。

(文章を書くにあたり敬称を省略させていただいております)



2015年5月15日金曜日

淡麗極上〈生〉とピア・アンジェリ

夏が近づくとビールや発泡酒のCMが幅を利かせるようになり、暑い季節の到来を教えてくれます。そんな発泡酒のCMできになる音楽といえば、淡麗極上(以前は麒麟淡麗)〈生〉の"Volare"。発売当初からジプシー・キングスの鮮やかな歌声が耳に残るもので、Wikiによると2004年〜2007年を除いてこの曲がずっとテーマソングになっているようです。今年は船乗りの合唱バージョンのようですが、また淡麗のCMねって感じがしてます。

その"Volare(ヴォラーレ)"という曲はジプシー・キングスのオリジナルといっても信じてしまいそうにしっくりする歌・演奏ですが、実はカンツォーネで1958年の曲です。個人的にはピア・アンジェリの元気で初々しく歌っている曲なのです。

ピア・アンジェリの《イタリア》という(個人的に)美ジャケの頂点にあると思っているアルバムの1曲目にこの曲が収録されています。ピア・アンジェリ(1932〜1971)は歌手ではなく女優さんで、かのジェームス・ディーンの恋人だったということでも有名な美人さんです。ブルネットの髪と大きな瞳が特徴的なピア・アンジェリにはこれといった代表作(「ソドムとゴモラ」や「傷だらけの栄光」などに出ています)もなく、ジェームス・ディーンと悲恋に終わった後に結婚したのですが上手くいかず42歳で自殺してしまっています。そんな彼女の唯一のアルバムはイタリアのアイドルとしてもてはやされていた1959年の作品です。

ピア・アンジェリを知ったのは中学生の頃、キラー通りにあったOn Sundaysという雑貨屋さんにあった葉書を手にとったとき…それからほどなくしてこのアルバムを知り、オリジナル盤をいつかこの手にと思いつつ30年近く経ちましたが、このアルバムへの思いは昔も今も変わりません。




2015年5月9日土曜日

セロニアス・モンクのいた風景

あっという間にゴールデンウィークが終わり、5月も3分の1が過ぎようとしています。おかげさまでクリニックも開院1年が過ぎ、多くの患者さまに受診していただけるようになりました。忙しく仕事ができる喜びを感じています。連休は昨年に続き、軽井沢で過ごしてきました。昨年の教訓を活かしてほとんど渋滞に遭遇することなく移動ができ、ゆっくりと英気を養うことができました。

軽井沢では村上春樹編・訳の「セロニアス・モンクのいた風景」を読んできました。セロニアス・モンクというと「風変わり」とか「異端」というキーワードが浮かぶジャズ・ピアニストの巨人(手垢のついた表現になりますがレジェンド)のひとりです。CS放送のミュージック・エアでライブ映像を観たり、CDも何枚も聴いているのですが、いまいちピンとこないピアニスト(あくまで個人的主観です)でした。そんなセロニアス・モンクについてリアルタイムで触れ合った音楽家、評論家、パトロンなどの文章を村上春樹が翻訳し、個人のエッセイを加えた1冊です。セロニアス・モンクに対するそれぞれの立場からの評論はおおむね好意的なものであり、その先進性と特異性がジャズを更なる次元に導いたという印象があります。興味深いエピソードはマイルス・デイビス楽団をクビになった若きジョン・コルトレーンとのやりとり(このふたりが共演した音源はほとんど残っておらずどんな演奏をしたのか気になります)やダウンビート誌がおこなった「ブラインドフォールドテスト」での歯に衣着せぬ言動(「私はすべての音楽が好きだ」という言葉で許してもらえる…はずです)などでした。

村上春樹の私的レコード案内…あくまで私的であるといつもの春樹節(このうねうねとした言い訳がとても好きです)でアルバムを聴き直してみようという気分になります。

私のセロニアス・モンクのベストアルバム、あくまで私的ということで、名作とかこの奏法がすごいなどという一般的評価とは関係なく、僕にとっての「セロニアス・モンクのいた風景」は《Criss-Cross》です。いろいろな意味でモンクらしくない聴き易さがあるからです。


2015年4月20日月曜日

42歳とノエル・ギャラガー

4月は私の誕生月でもあり、日本医学放射線学会総会に参加しているうちにひとつ歳をとってしまいました。30歳は医師としてこれから成長していく時期で、いろいろなことを吸収している時期でもあったため、ひとつずつ大人への階段を登るような気持ちがあったのですが…40歳は日々の生活に上手く溶けこむように自然であり、今年は誕生日も忘れそうな感じで過ぎていきました。

昨年は開業したばかりでいろいろと無駄に悩んだり、考えたりすることがあったのですが、いまは少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。いままでのスキルと知識を活かして、地に足をついた医療を提供できるようになることが今年の目標です。

誕生日の音楽について何か語ろうかと思ったりしたのですが…先週はノエル・ギャラガーの武道館ライブに行って、久しぶりにノエル・ギャラガー・ハイ・フライング・バーズやオアシスを聴いていました。ノエル・ギャラガーのライブは一昨年のフジロック以来なのですが、今年は新作とともに来日したため曲目は新しいアルバム中心でした。でもノエル兄というとやっぱりオアシスの神曲(もはやイギリス国家との声も?)である"Don't Look Back In Anger"は外せません。お決まりの大合唱を聴くといつも涙がでます。今年はフジロックにも参加するようなので、是非リアム(最近ノエルのライブに来ていたらしいので…)とオアシス再結成をしてもらいたいな…と思っています。


2015年4月14日火曜日

Robert Stewart - Beautiful Love

1曲目の《Speak Low》からテナー・サックスの野太いブロウを聴かせてくれる1枚。(良い意味での)むせぶような黒さを感じさせるアルバムで、2曲目《Beautiful Love》から7曲目《Canadian Sunset》まで全部スローなバラードなため、"Beautiful Love Bullard"というタイトルで再発しているようです(ジャケ写もジャズっぽいものに変わっています)。《Speak Low》はこの演奏が好きで事あるごとに聴いていたため、自分の中の演奏基準になっているほどです。

ロバート・ステュアートは1990年〜2000年台にかけて何枚かリーダー作を作っているのですが、2004年を境にぱったりとアルバム作成をしておらず、公式サイトとおぼしきWebサイトも更新されている気配がありません。iTunesでリーダー作をほぼ購入できるのですが、演奏スタイルがデビュー当時(このアルバムは2作目)のブロウで男気あふれるサックスから徐々にスピリチュアルな感じになって、最後にはメロウな演奏になっており(これはこれで良い演奏なのですが)、目指していたものがどこなのかわからない感じがします。

Wikipedia日本版には(当然?)彼の項目はなく、名前検索だけでは現状がわからず消息不明にでもなっているのかと思ったのですが...詳細にGoogle検索してみると昨年のジャズ・ライブの案内がみつかったので、アメリカで(ライブを中心に)活躍されているのではないでしょうか?ジャズの世界は長らくアルバムに恵まれなくても、突然復活することもしばしばあるので、気長に待つことにします。

ジャケットの写真は誰だかわからないのですが、ロバート・ステュアートではありません。


2015年4月10日金曜日

Guiomar Novaes - Beethoven: Piano Concerto No.5 in E-flat major, op.73 "Emperor"

最近しなくなった事というと、映画を観ること、交響曲や管弦楽曲などをゆっくり聴かなくなったこと…でしょうか。学生の頃は映画を観る機会が多かったのですが、救命やオンコールで呼ばれる日々を過ごすようになった頃から減ってます。交響曲や管弦楽曲などの大音響の曲は…(名曲喫茶ではないので)待合室のBGMとしてもなかなか流すこともできないので、必然的に減っているのでしょうか。

そんな中、久しぶりにベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番を聴いて懐かしい思い出が蘇ったので書こうと思います。この曲は《皇帝》という名前がついており、冒頭が非常に壮麗で男性的な感じがあり《皇帝》らしい演奏が好まれているようなのですが…私がイメージするこの曲は第2楽章なので、むしろ優しく包み込まれるような暖かみのある演奏が好きなのです。壮麗で華美な両端楽章にはさまれた愛らしい第2楽章が好きなのは、「ピクニック at ハンギングロック」(オーストラリア時代のピーター・ウィアー作品!)という映画による影響が大きく、この曲を聴くたびにボッティチェリの天使と形容されたミランダのスローモーションを思い出してしまいます。

そんな刷り込みで聴く《皇帝》は思い入れたっぷりに第2楽章を演奏してくれるものが好きで、このギオマール・ノヴァエスの演奏を始め、カラヤン&ワイセンベルク(ライブ)、マルグリット・ロン、ソロモンなどなどオールドタイマーな選択肢になってしまいます。ギオマール・ノヴァエスはブラジルのピアニストで、少し癖がある(ようなのですが)非常に優しいピアノの音色で美しい旋律を際立たせてくれます。アメリカの廉価盤レーベル(Vox box)の古い録音ですが、とても聴きやすいです。

2015年4月6日月曜日

4月になりました - Xavier Davis Trio

4月になりました。クリニックも開院してから無事に1周年を迎えることが出来ました。これもひとえに、受診してくれた患者さんや優しく支えてくれた家族・スタッフのおかげです。これからもゆっくりとひとりひとりのために丁寧な診察を心がけていきたいと思っています。また今月から美容外来(私は美容が全くわからないので妻が診察します)ができたので、これまで以上に“皮ふケア”ができるクリニックになることを期待しています。

4月のBGMは午前・午後ともにジャズにしました。先日、ほぼ1年ぶりにに受診された患者さんに「ここはいつもジャズが流れていていいですね」と言われたときはとても嬉しく思いました。これからも心地よい音楽の流れる待合室になるようにしたいと思います。クラシック(R&B、ボサ・ノヴァなども)などを集中的に流すことも考えています。

Xavier Davis(ザヴィエル・デイヴィス)は1971年ミシガン州生まれのピアニスト。サイドマンとしてニコラス・ペイトンやマーク・ターナーをはじめ、デヴィッド・ワイスなどの作品に名を連ねていますが、リーダー作はこの《Innocence of Youth》(2002年録音)だけのようです。ザヴィエル・デイヴィスがマルグリュー・ミラーにそっくりな演奏スタイルなのは、彼を見出したのがマルグリューであり、マルグリューをアイドルとして慕っているからとも言われます。このアルバムのイントロである"The Message"の流麗なピアノ・ソロだけでも彼の素晴らしさがわかります。3曲目の"Milk Wit A Koolaid Chaser "や"Milestones"などは完全にマルグリュー・ミラーであり、完コピなのかと思うほどです。"The Day Will Come"や"Innocence of Youth"などでは彼ならではのリリカルで知的なピアノを堪能することができます。




2015年3月26日木曜日

Andrea Pozza Trio - Drop This Thing

早いもので3月も残すところあと5日、日に日に暖かくなってきました。外堀の桜も一分咲きですが、桜の季節となっているのを実感しています。

1曲目《Nebulosa》の冒頭からカッコよく聴かせてくれるアルバム。《Nebulosa》は非業の死(無実の罪で捉えられ拷問の末殺されてしまったのです...)をとげた伝説的なピアニストである、テノーリオ・ジュニオールによるジャズ・サンバの名曲。いろいろなところでサンプリングされているので、冒頭の旋律はどこかで聴いたことあるはずです。アンドレア・ポッツァの演奏はリリカルでどこか醒めた感じもありますが、ジャズ・サンバというよりもジャズとして奏でられています。2曲目はジョー・ジャクソンの《You Can't Get What You Want》をアラン・ファーリントンの渋い声でジャジーに聴かせてくれます。他にもボビー・コールの《Perfect Day》にオリジナル曲を散りばめた1枚です。

春より秋〜冬の寒い時期にあっているかな...と思いながらも、《Nebulosa》聴きたさについついかけてしまう1枚です。


2015年3月18日水曜日

John Coltrane - Lush Life

久々のブログ更新です。アルバム冒頭からジョン・コルトレーンの野太くセンチメンタルなソロが朗々と奏でられるこの盤は、後年のスピリチュアルなコルトレーンが苦手な人でも楽しめる1枚です。コルトレーンというと(良い意味での)黒さが全面に溢れており、「ジャズってこんな感じ」という漠然とした答えを導き出してくれるジャズ界の巨人です。ただ、だんだんとスピリチュアルで難解なフリー・ジャズに傾倒してしまうため、アルバムをたくさん持っていても手に取るアルバムが限られてしまうひとりでもあります。

1曲目《Like Someone In Love》から3曲目《There's Slow Blues》(LPでいうところのA面)はピアノレストリオであり、1957、8年あたりの録音と思えないほど臨場感あふれるコルトレーンのテナーが魅力です。4曲目の表題曲である《Lush Life》からはレッド・ガーランドのピアノが参加し、コルトレーンも甘くセンチメンタルな演奏を聴かせます。

A面B面という表現はレコードにしか通用しない表現ですが、盤をひっくり返すと雰囲気の違う演奏になるなんてとても素敵な選曲だなと思います。このような選曲から、今年のグラミーでプリンスが「皆さん“アルバム”って覚えていますか?“アルバム”って大事なものなんです」とスピーチしたことを思い出しました。いまはストリーミングなどで気に入った曲だけピックアップでき便利なのですが、取捨選択するのではアルバムのコンセプトだけでなく「演奏(録音)された時代や背景を反映している空気」というものもわからなくなるので好きではありません。

このアルバム...というよりコルトレーンは秋〜冬になる時期に流したほうが雰囲気あったかもしれないのですが、ともあれ午後の待合室を落ち着かせてくれる素敵な1枚です。



2015年3月10日火曜日

患者番号が1500を超えました

昨年の11月に患者番号が1000を超えてから4ヶ月と少し、ようやく?1500まで到達しました。「ここに皮膚科があったなんて知らなかった」と言われること約1年...ホームページ(Webサイト)を中心にゆっくりながら新規の患者さんがコンスタントに来ていただけることに感謝しております。

皮膚症状と生活スタイル、薬の組成・性状(外用剤であれば成分・添加物、内服であればどのような系統なのか...など)などを組み合わせて、可能な限り(医療に100%や絶対ということはないのは重々承知です)速やかに皮膚の状態が改善する方向性を定めていきたいと思い、日々の診療をしています。

そんなときに思い浮かぶ演奏家はチェロの伝導師エンリコ・マイナルディです。ゆったりとしたテンポで朴訥な歩みながら深く暖かみがあるチェロの音色を聴くたびに、こんな演奏のように自分も診察できたらと思います。マイナルディにはバッハの無伴奏チェロ組曲の名演(2種類)もありますが、一番好きなのはザルツブルク音楽祭でカルロ・ゼッキのピアノで奏でたシューベルトの《アルペジオーネ・ソナタ》です。1959年のライブ音源で、録音マイクが非常に近接しているためかチェロの響きが非常に生々しく、マイナルディの息づかいや鼻歌
も聴こえてきます。

シューベルトは得意な方ではなく、アルペジオーネ・ソナタもロストロポーヴィチの演奏を小さいころによく聴いたな...程度の感想なのですが、マイナルディの重くゆったりと語りかけるようなチェロの響きはいつ聴いても心に染み渡り、とても好きな演奏です。

「わたしの信条と目標は音楽に奉仕することであって、自分自身を見(魅)せるために音楽を利用することではありません」というマイナルディの言葉は、音楽を診療に置き換えると私の信条・目標になります。奇を衒わず、正攻法で医療に携わる...これからもゆっくりと(そして着実に)診療していきたいと思いました。



2015年3月5日木曜日

ホームページのリニューアル(その2)あっという間の移管作業終了

今日は暖かく春らしい気候になりました...と喜んでばかりはいられないスギ花粉の季節になってしまったようで、いままで花粉症と無縁だと思っていた私も目が痒くなってきました。

ホームページのリニューアルは少しだけ進展しています。一番の課題というか大きな壁(と勝手に決めつけている)のドメイン移管がちょっとだけ進んだので、一安心というところです。←と昼休みに書きました。

ドメインとは?とお思いの方もいると思いますので、簡単に説明すると「ネット上の住所」という感じになります。正確には違うのかもしれないのですが、イメージとしてはそのようなものです。住所があって初めて郵便物が届くように、ネット上でもドメインがあるために目的のホームページ(Webサイト)まで到達することができます。

そのドメインをJimdoで作って、いままで使用していたものをWixに移動する作業がドメイン移管になるのです。ドメイン移管にはAuthcord(オースコード)という不正に移管できないようにするためのパスワードのようなものがあって、それをJimdoからWixに移管するときに入力するのですが...こともあろうか教えてもらったAuthcordがロックされたもので、移管作業ができずにキャンセルすること2回。合計2週間ほど停滞してしまうという辞退に。ようやく昨晩になって認証待ちまでこぎつけました。

ここから約1週間(希望的観測だと4〜5日ぐらい)で移管作業終了と思っていた矢先、Wixから「移管作業終了のお知らせ」メールが届き、あっという間に移管作業終了しました。←夕方になって急展開をむかえました

その後はホームページがきちんと表示されるか確認などし、今に至っています。
前のホームページはwww.kobaskin.jimdo.comでまだみることができます。少しの間は残しておくつもりです。


2015年2月25日水曜日

ホームページのリニューアル(その1)とステファン・アスケナーゼ

かれこれ2週間以上、ホームページ(Webサイト)と格闘しています。発端はGoogleのウェブマスターツールで「モバイルユーザビリティ上で重大な問題が検出されました」と指摘されたからです。ホームページをスマホ対応にしていなかったこともあるのですが、現行のホームページ・ビルダーだとスマホサイトを自由にいじれないこともあって、一念発起して新たに作ることにしました、と作り始めて...いろいろな障害?にぶち当たって今日まで来ています。

第一に自分でホームページ(Webサイト)をつくること...学会発表のスライドを作ることが好きならば、簡単に作ることのできるホームページ・ビルダーがあるので大丈夫...なはず。

次にPCが得意...NECのPCシリーズやMSX(懐かしい)から始まって、Windows3.1、Mac Classicの頃からパソコンに慣れ親しんできた...といっても知らないことが多い。

最後に一番大事なのは美的センス...こればかりはいまさら磨くことも難しい大きな壁です。

こうした難関を乗り越え、なんとか新しいサイトを作り上げたのですが...そこにはぬりかべのごとく大きな壁が立ちふさがっていたのです。(つづく)

2月はステファン・アスケナーゼの1950年代にグラモフォンに録音したショパン作品をBGMにしています。いまも現役の名ピアニスト兼指揮者のウラディーミル・アシュケナージと似た名前で打ち間違いと思われそうですが、アスケナーゼです。マルタ・アルゲリッチや内田光子といった現代でも最高峰といわれるピアニストたちのお師匠さんです。録音の古さも相まってか、暖かく、緩やかな音色でとても心地よいです。ホームページで煮詰まった頭もかなりすっきり...します。


2015年2月20日金曜日

Steve Czarnecki Trio - When I Dream of You

スティーブ・クザルネッキがリーダーのピアノ・トリオ(1993年録音)。ジャケ写は写真家エリオット・アーウィットの代表作である、”California 1955"という写真を使用している。この写真を使ったアルバムというとエディ・リーダー率いる(一発屋)フェアグラウンド・アトラクションの"The First of a Million Kisse(邦題ファースト・キッス)"が有名。そのジャケットに比べるとチープな作りですが、演奏は奇を衒うことなくストレートなまごうかたなきピアノ・トリオです。

ジミー・スミスの《Bashin'》から始まり、アルバムタイトルにある《When I Dream of You》など3曲のオリジナルを含めた合計11曲から構成されており、どの曲もスローからミディアムテンポで安心して聴いていられるところがよいです。ビル・エヴァンスに捧げると書かれた《Who Can I Turn To ?》ではスティーブ・クザルネッキの美しいピアノ・ソロを聴かせてくれます。クリニックのBGMには(良い意味で)最適なアルバムです。

《I've Got You Under My Skin》では女性ヴォーカル(Baomi Butts-Bhanji)が入っているのですが、裏面には記載がなく初めて聴いた時にびっくりしました。


2015年2月18日水曜日

Karen Souza - Essentials 2

今日も冷たい雨が降っています。午前は開店休業中といえるほどのんびりしてました…。午後は予約が入っているので少しは仕事した感じになるのでしょうか?

こんな冷たい雨の午後はアルゼンチンの歌姫カレン・ソウサの新しいアルバムをかけています。2011年に"Essentials"というロックやポップスの曲をカヴァーしたアルバムでブレイクしており、その2作目がこのアルバムです。彼女はつい先日ブルーノート東京でライヴしていたのですが、残念なことに行けませんでした(日程を忘れていただけ…)。40歳を過ぎた耳には1曲目のブルース・ホーンズビー《The Way It Is》の旋律を聴いただけで胸が熱くなるのに、おまけにアンニュイなハスキーボイスでジャジーに歌われるとイチコロです。3曲目のモリッシー、9曲目のINXSなど懐かしい曲ばかりでアレンジともども気に入っています。


国内盤だけリック・アストリーの《Never Gonna Give You Up》が入っているのを知らずに輸入盤を購入してしまったが心残り…iTunesで買う…か思案中です。



2015年2月17日火曜日

Kenny Werner Trio - A Delicate Balance

今朝の雪は勢いがあって、積もるのかと思っていたらすぐに小雨になりました。でもすごく寒くて、春になるまでまだまだ時間がかかりそうです。こんな寒い日のBGMはケニー・ワーナーの1997年録音を選択。ドラムがジャック・ディジョネット、ベースがデイブ・ホランドととても贅沢な組み合わせ。ケニー・ワーナーはアメリカのピアニスト兼作曲家で、学生時代にクラシックからジャズに転向しています(ハービー・ハンコックもクラシックからジャズに転向ですが...)。このピアニストが人気あるのかは別として、よく言われているのは「こねくりすぎ」「いじりすぎ」。彼の奏でる旋律は美しく叙情的なのですが、直感的というより頭でっかちで神経質(偏屈?)のような印象をあたえるところはあります。とくにオリジナル曲などはよく聴きこまないと良さがわかりにくいかもしれないです。ケニー・ワーナーは個人的に好きなピアニストで、ふとした時に聴きたくなるひとりなのです。寒い雨の日には、こんな叙情的でちょっとだけ内向的で偏屈なピアノが合っています。ナット・アダレイの"Work Song"を以外は全てケニー・ワーナーオリジナル曲です。

2015年2月14日土曜日

ブログを新しくしました

Webサイトを新しくするため、いままで使用していたJimdoのブログからBloggerに変更することになりました。サイトの移管作業が終わるまで少しご迷惑おかけするかもしれません。

昔のブログも少しずつ取り込む予定ですが、時間がかかりそうなのでゆっくりとしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

2015年2月9日月曜日

Jorge Bolet - Live Liszt, Franck, Mendelssohn

2月はロマン派と言われる作曲家の音楽を巨匠・名匠の演奏で…という趣旨でアルバムを選んでいます。ホルヘ・ボレットはキューバ出身のピアニストで、フィラデルフィアのカーティス音楽院でゴドフスキー、サパートンに師事、さらにリストの弟子であるローゼンタールからも指導を受けており、リスト直系の孫弟子であることも知られています。これはボレットの死後発売された「未発表ライブ集」でメンデルスゾーン《前奏曲とフーガ》第1曲、フランク《前奏曲。コラールとフーガ》、リスト《ノルマの回想》の3曲です。フランクとリストは演奏時間が20分(メンデルスゾーンでも10分)を要する難曲ばかりです。

ボレットはGHQの一員として日本に滞在したことがあるそうですが、本職のピアノでは1970年代に入るまで無視されていた「忘れられていた天才」だったそうです。私がクラシックを聴き始めた80年代はすでにLONDON(DECCA)レーベルから次々と新譜が発売される人気ピアニストでしたが、そんな彼も長い不遇な時代があったなど全く知りませんでした。

メンデルスゾーン《前奏曲とフーガ》第1曲は遠い昔に聴いた時はつまらないと感じたのですが、この演奏ではバッハを模した厳格な曲を叙情的にスッキリと演奏していてとてもよい曲だと再確認させてくれました。フランクも堅苦しさがないとてもロマンティックな演奏で素敵です。リストはベッリーニのオペラ《ノルマ》の独唱、合唱を主題としたヴィルトゥオーソな曲ですが、ボレットは技巧を感じさせない流礼な演奏です。たまにはこんなロマンティックな曲がBGMなのもいいですね。

これは神保町の古本市で500円で購入しました。


2015年2月3日火曜日

Mulgrew Miller - Trio Transition

2月からホームページ上に「本日のBGM」を載せることにしました。だいたいこんな感じですというアバウトなものですが、お役に立てればと思います。
いままでクラシックだとバッハからモーツァルトまでが多かったのですが、今月はロマン派〜国民楽派まで少し濃厚な音楽を流してます。ジャズはピアノ・トリオ中心からサックスなどを含めた編成も少しずつ増やしています。火曜日午後はマルグリュー・ミラーがサイドマンとして演奏しているアルバムとこの日本で録音された「Trio Transition」です。マルグリュー・ミラーは私が敬愛するピアニスト…残念ながら一昨年にまだまだこれからという時期で鬼籍に入ってしまいましたが…その彼がウディ・ショウ、トニー・ウィリアムスやアート・ブレイキーのバンドで頭角を現して、満を持してリーダー作を世に問うた、日本公演時に録音された1987年録音のアルバム。

発売当時はベースのレジー・コールマン、ドラムのフレドリック・ウェイツが三位一体になり対等に演奏しているという趣旨だと思ったのですが、いま聴いてみるとマルグリュー・ミラーのピアノが抜きん出ていて、マルグリュー・ミラーのリーダー作のようです。デビュー当時はマッコイ・タイナー風とも言われた彼の流麗かつ力強いピアノは、紛れも無い彼独特のものであり、このアルバムでは勢いというか若々しさも感じさせます。これに似た演奏というと…いまは大林武司、ザヴィアー・デイヴィス(最近リーダー作がないですね)などでしょうか。最近は彼らのようなマルグリュー・ミラー系?とも言えるピアニストがちらほら見かけるようになっているので、これからは彼らの演奏が楽しんでいこうと思います。


2015年1月27日火曜日

(スギ)花粉皮膚炎とは?

1月下旬になりスギ花粉が気になる季節になってきました。花粉症とは杉などの花粉がアレルゲンとなってアレルギー性鼻炎を発症するものを指し、主に耳鼻科領域の病気と思われがちですが、肌トラブルの原因になることも多く、最近では「(スギ)花粉皮膚炎」なる言葉も聞かれるようになりました。
ただこの「(スギ)花粉皮膚炎」はまだ皮膚科のなかではコンセンサスを得た疾患名ではありません。キャッチャーなフレーズなので汎用されやすいですが、メカニズムや原因などからふさわしい名前かどうかまだまだ議論の余地があるところです。個人的にはわかりやすく、説明しやすいので良いと思います。
「(スギ)花粉皮膚炎」は東京医科歯科大学病院医学部皮膚科の横関博雄教授が提唱したもので、2010年前後より耳にするようになりました。この皮膚炎の大きなポイントはスギ花粉による経皮感作のメカニズムであり、そのことについて否定的な意見を仰る《高名な皮膚科医》の意見を聞いたこともあります。
「感作」とは、「生体に特定の抗原を与え、同じ抗原の再刺激に感じやすい状態にすること(デジタル大辞林)」となっていますが、ざっくり言うと「からだの拒否反応」なのです。なのでかぶれ(接触皮膚炎)の多くは初めて触れたものや使用したものでは症状がなく、使用し続けることで悪化するのです。その感作を皮膚でおこなわれたものが「経皮感作」と言います。経皮感作で有名なものは、数年前に話題となった「茶のしずく石鹸」に含まれた加水分解小麦(グルバール19S)やアメリカの子供に多いピーナッツアレルギーが挙げられます。
スギ花粉の場合は、『スギ花粉抗原は高分子で(皮膚の)角質層を通過できないから「(スギ)花粉皮膚炎」などと呼ぶ必要はない』という意見を耳にすることがあります。アトピー性皮膚炎など既存の皮膚トラブルがあり、それが花粉により一時的に増悪したと考えればいいのでは?という意見だと思います。
ただ、加水分解小麦の場合でも健常皮膚で肌トラブルがない人でも経皮感作されていることから、過度の洗顔や化粧品の刺激による皮膚バリア機能の障害があることで経皮感作されたと考えられています。スギ花粉でも同じようなメカニズムで皮膚炎を起こすことが考えられます。なので「(スギ)花粉皮膚炎」と言ってもいいのでは…と考えます。なぜ(スギ)としているかというと、シラカンバやブタクサによる皮膚炎もあるため「花粉皮膚炎」が一番しっくりくるネーミングじゃないでしょうか?

冬から春にかけて目の周り、頬、おでこなどに皮膚症状がみられた場合、スギ花粉による皮膚炎の可能性もあり、気をつけなくてはいけないと思います。花粉症があるなしは関係なく、スギ花粉が多く飛散している地域・場所では起こりうる皮膚炎ですので、気になるときは皮膚科専門医へ受診ください。

2015年1月26日月曜日

Joe Chindamo Trio - Joy of Standards

オーストラリアのピアニスト、ジョー・チンダモによるピアノ・トリオ。玄人好みのピアノ・トリオを量産している澤野工房による2000年録音作品。このシリーズは2002年にVol.2が録音されているので、このアルバムが好評だったためと思われます。

オーストラリアのジャズはあまりピンとこないというか(ジャネット・ザイデルも?)、南半球だと、ニュージーランドのダン・パピラニー(といってもイスラエル出身)ぐらいしか知らないのですが、ジョー・チンダモのピアノは爽やかで心地よく、適度な憂いもあるため、BGMに最適です。

チンダモがジャズにハマるきっかけは、オスカー・ピーターソン、ビル・エヴァンス、エロール・ガーナー、チック・コリア、ハービー・ハンコックなどを聴いていたこと、15歳のときにピアノを購入したことだそうです。18歳になって初めてピアノレッスンを受けたという遅咲きにみえる経歴ですが、6歳の頃からアコーディオンを嗜んでおり、音楽的な素養は十分あったのでしょう。

インタビューを読むとメロディーを大事にしていること、曲を再構築することに楽しみがあると答えており、メロディーメーカーとしてもなみなみならぬ自信を感じさせます。このアルバムでも《Charade》《I Fall In Love Too Easilly》《When I Fall In Love》などのスタンダードに混じってチンダモのオリジナル曲も3曲入っていますが、全く違和感ありません。



2015年1月24日土曜日

James Rhodes - Bullets & Lullabites

中古CD屋さんの特売コーナーでみつけた1枚。更にまとめ買い半額セールで、新品を250円ほどで購入してます。ジェームス・ローズというピアニストは”ロックスター・ピアニスト”という異名をもつイギリスのピアニストで、幼少時の虐待、自殺未遂、精神病棟への入院歴と妻と離婚…など幾多の困難を乗り越えて現在にいたるようだが、経歴もどんな演奏するかもわからないまま購入してしまいました。日本のWikipediaには彼の解説はなく、CDもこれだけのようです。シャーロックで人気のベネディクト・カンバーバッチとの対話やBSで放送された「心の旋律に耳を澄まして」というドキュメントがGoogle検索で引っかかってくる。
黒縁メガネに無精髭、ぼさぼさに伸びた髪はクラシックのピアニストにしては異質であるが、CDから流れる音楽は至極真っ当で、モシュコフスキー、アルカン、ブルーメンフェルト、ラフマニノフなど技巧派のピアニスト作品を散りばめている。CDはCD1 "Bullets"、CD2 "Lullabies"という2枚組のからなり、それぞれ午前、午後を表している。CD1枚あたり30〜40分程度の収録でLPのような曲数ですが、コンセプトを重視した作り…なのでしょう、きっと。 
"Bullets"は技巧が散りばめられた曲にベートーヴェンのピアノ・ソナタ18番スケルツォやショパンのピアノ・ソナタ第3番プレストなど、ただのピアノ小品集とは異なる選曲になっています。アルカンのグランド・ソナタでも破綻なく弾ききっており、技巧に自身がありそうな感じ(あくまで感じです)。 でも"Lullabies"の優しくゆるやかな演奏のほうが彼には合っているようです。ドビュッシーやラヴェルなどはとても思い入れを感じます。でも一番美しく響くのはショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章《ロマンツァ》ですね。
経歴などからはデヴィッド・ヘルフゴットやイングリッドフジ子ヘミングと同じような括りになりそうですが(毀誉褒貶がはっきり分かれそうという意味です)、純粋に楽譜に書かれた音を音楽を奏でるという「演奏」というよりは音符を通して自己を吐露する「音を紡ぐ」意味でとてもよい演奏と思います。BGMよりも自宅でしっとりと楽しむ音楽ではないでしょうか?生演奏などとても楽しめそうです。来日公演などないのでしょうか?



2015年1月22日木曜日

Paul Lewis - Schubert: Piano Sonata D.850, etc

このところの冷たい雨は外出をするのも嫌な気持ちにさせるのですが、なぜだかシューベルトが聴きたくなります。

シューベルトは苦手な作曲家の一人で、長いこと聴かず嫌いの状態が続いていました。村上春樹の「海辺のカフカ」にシューベルト《ピアノ・ソナタ第17番ニ長調》が登場し、彼のエッセイでアンスネスやイストミンのCDをすすめていることも知っていたのですが、聴かず嫌いは変わらずでした。と、過去形で書いているのは、ポール・ルイス(ポール・スミスと混同してしまうような名前です)の演奏がとても素晴らしかったので、シューベルトをもっと聴いてみようと思っているから。
シューベルトの音楽を端的に言い表すことは難しいのですが、心惹かれる旋律にあふれていても「気まぐれ」で「とりとめのない」印象を与え、どこか仄暗い感じの音楽になるのでしょうか?その中でもD.850のピアノ・ソナタはとりとめのなさが際立っている感じです。その「冗長」な音楽をポール・ルイスは、深い森のような陰鬱な(シューベルトの)暗闇へ連れて行くことなく、節度のある抑揚のとれた旋律で現実とシューベルトを結びつけてくれます。彼の師匠であるブレンデルの演奏に似ているのは知的で少し突き放したような淡々としたところですが、優しく包み込んでくれる優しさが異なっているようです。

冷たい雨の日はどうしてシューベルトをBGMにしたくなるのか…とポール・ルイスを聴きながら考えているところです。



2015年1月15日木曜日

Glenn Gould - Richard Strauss: Piano Sonata, etc.

グレン・グールド最後の録音であるリヒャルト・シュトラウスの美しいピアノ・ソナタ、5つの小品。リヒャルト・シュトラウスというと大管弦楽を駆使した壮麗な管弦楽やオペラをイメージしますが、個人的には初期の作品が好きです。とくにソナタはピアノ、ヴァイオリン、チェロといずれも佳作(と言っていいのかわかりませんが)で、とても気に入っています。その中でも17歳に作曲されたピアノ・ソナタはリヒャルト・シュトラウスとは思えない?愛らしい曲です。若書きの作品といってもそこはリヒャルト・シュトラウス、ちゃんと完成された作品になっています。もっと演奏されても良さそうなのにといつも思いながら聴いています。

グールドの演奏は、同時期のブラームス《4つのバラード》《2つのラプソディ》と同じように淡々とした乾いた響きによる冷たさと優しい旋律を奏でるときの儚さを併せ持った不思議な演奏です。若いころのグールドのような一気呵成の勢いはなく、良い意味での枯れた演奏...なのでしょうか。

今日のように寒い雨の日のBGMには、グールドお気に入りのリヒャルト・シュトラウスが最適です。

2015年1月6日火曜日

The Paul Smith Trio - Saratoga

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。昨年は開業前からバタバタし、開業後も波に乗り切れないまま?あっという間に1年が過ぎてしまった感じです。本年も変わらず丁寧な診療を心がけていきますので、よろしくお願いいたします。

最近ブログが少し停滞気味になっているのは書くヒマがないほど忙しい…というわけでもなく、ちょっとサボり気味なだけでした、すみません。12月はなぜかクラシックのことばかり書いていたので、今月初めはジャズで...といいつつポール・スミス・トリオという変化球で行きたいと思います。今回紹介する《サラトガ》(1959)というこのアルバムは、映画の主題歌をテーマにした作品らしい…というのも、ライナーノートの寺島靖国氏が《サラトガ》(1937)という映画について延々と記載しているので間違いないはずです。でも肝心の映画がどんなものなのかわからない…。

1曲目は《Petticoat High》という軽快な曲で、ポール・スミスらしくていいです。変わった音色を奏でるのが《The Parks of Paris》で、ピアノがマンドリンのように奏でられてびっくりします。ちょっとゴッドファーザー愛のテーマのようでもあり、切ない曲調が気になります。これらはみなハロルド・アーレンという作曲家のもので、アーレンというとジュディー・ガーランド主演の《虹の彼方に》の有名な主題歌の作曲家でもあり、とてもよい曲を書いています。

アーレンってどんな映画の曲を書いているのか気になってWikipediaで確認したところ...サラトガって1959年に作られたミュージカルだったんですね!さすがWiki先生。すぐに検索できる良い時代になったと思いましたが、ライナーノート(1998年に書かれています)内容って…うーん、考えないことにします。《サラトガ》って映画もわかったことだし。ちなみにサラトガは(ネイティブ・アメリカン)イロクォイ族の言葉で「急流の場所」を指すそうです。南北戦争ではサラトガの戦いというのがあったようです。余談です。

今年もよろしくお願いします。