2015年7月10日金曜日

旧友に出会う偶然とインプロヴィゼーション

7月はずっと梅雨空の雨続きでしたが、今日は晴れ間も出て夏を予感させる暑い一日になりました。本日は大学の外来もなく帰宅していたところ、突然声をかけられて振り向いたところ、外国に住んでいるはずの幼なじみがいてびっくり。小中学校が一緒で、研修医のときに同じ病院で研修したので十何年に一回は再開している計算ですが…夏休み期間で日本に帰っているとのこと。こんな偶然びっくりですが、天文学的確率…というわけでもないのでしょうか。

音楽での偶然性はジョン・ケージという戦後に活躍した現代作曲家(この言葉は20世紀的な観点からのです)が提唱していますが、そんな「偶然性の音楽」には興味がなく、ジャズでいうところの「即興(インプロヴィゼーション)」が相応しいかな?インプロヴィゼーションというとかつてビル・エヴァンスがマイルス・デイヴィスのアルバムのライナーノーツに「ジャズとインプロヴィゼーション」という文章を寄せていて、その中で「日本絵画」を「インプロヴィゼーション」と類推するという内容を思い出します。そんなビル・エヴァンスのアルバムでは《アローン(アゲイン)》はインプロヴィゼーションにあふれた名演だと思います。リリカルでありつつもささやかな咆哮と即興性にあふれたピアノ・ソロはとても心地よい時間を与えてくれます。



2015年7月8日水曜日

いちばん美しいピアノ曲はなに?

梅雨空が続いています。クリニックは混んだり、空いてたり読めない状況です。のんびりいきましょう。いちばん美しいピアノ曲(クラシック)は?と聞かれると答えるのが難しいのですが、全体的な雰囲気がよいのと、ひとつの旋律だけでなく曲全体が美しくまとまっている曲…と考えると、最近のお気に入りはプーランクの《メランコリー》です。

プーランクは20世紀初頭から中期に活躍したフランスの作曲家で、フランス6人組と呼ばれるグループの中で一番有名なひとでもあります。「フランスのモーツァルト」(フレーズだけは「浪速のモーツァルト」キダ・タロー先生に似てますが…)とも言われ、洒脱な曲が多く、ヒッチコック監督の「ロープ」という映画でも3つの常動曲が使用されています。この「ロープ」という映画は1948年当時としては画期的なゲイを示唆する描写が多く、さすがヒッチコックとニヤリとさせられます。

プーランクはちょっとうるさくって不協和音があって聴きづらい曲とすごく甘くてとろけるような曲の落差が激しいのですが、《メランコリー》は6分間を通して同じフレーズを転調しながら漂うように甘美な音色を奏でるのですが、長調なのに全体的には悲しげな曲調になっています。これはプーランクの親戚・友人の死や第2次世界大戦の暗い影を反映しているとも言われますがどうなのでしょうか?

ポール・クロスリー、エリック・ル・サージュ、アレクサンドル・タローいずれも甲乙つけがたい名演ですが、ドビュッシーやラベルではさらりと即物的な印象のピアノを聴かせるポール・クロスリーの思いの外しっとりした演奏が最近のお気に入りです。


2015年7月2日木曜日

梅雨の日のピート・ジョリー

6月は200名を超える新規受診の方々がいらしていただき、ようやくクリニックらしくなってきたかなと思っていたところ…今日はいつも以上にのんびりです。なでしこジャパンの試合もあったし、天気も悪いし…などと考えるのはやめておきます。

今年の梅雨は梅雨らしく(?)、小雨のぐずついた天気が続いています。そんな日のBGMはどうしようかと考えてしまうのですが、ピート・ジョリーの軽妙で明るいピアノが良いのではと"Sweet September"というアルバムなどをかけています。ピート・ジョリーは、ウエストコースト・ジャズと呼ばれる西海岸で演奏されていた白人系ジャズの代表的なピアニストで、かつては「幻のAVA盤」と呼ばれたらしいピアノ・トリオ盤です(いまだとApple Musicなどでも聴けます)。このアルバムから聞こえる音は、あらゆる点で輝いていていた1950年代のアメリカを想起させる明るい響きと懐かしさが混在して心地よい時間を与えてくれます。

今日の午後に期待しましょう。