2015年1月27日火曜日

(スギ)花粉皮膚炎とは?

1月下旬になりスギ花粉が気になる季節になってきました。花粉症とは杉などの花粉がアレルゲンとなってアレルギー性鼻炎を発症するものを指し、主に耳鼻科領域の病気と思われがちですが、肌トラブルの原因になることも多く、最近では「(スギ)花粉皮膚炎」なる言葉も聞かれるようになりました。
ただこの「(スギ)花粉皮膚炎」はまだ皮膚科のなかではコンセンサスを得た疾患名ではありません。キャッチャーなフレーズなので汎用されやすいですが、メカニズムや原因などからふさわしい名前かどうかまだまだ議論の余地があるところです。個人的にはわかりやすく、説明しやすいので良いと思います。
「(スギ)花粉皮膚炎」は東京医科歯科大学病院医学部皮膚科の横関博雄教授が提唱したもので、2010年前後より耳にするようになりました。この皮膚炎の大きなポイントはスギ花粉による経皮感作のメカニズムであり、そのことについて否定的な意見を仰る《高名な皮膚科医》の意見を聞いたこともあります。
「感作」とは、「生体に特定の抗原を与え、同じ抗原の再刺激に感じやすい状態にすること(デジタル大辞林)」となっていますが、ざっくり言うと「からだの拒否反応」なのです。なのでかぶれ(接触皮膚炎)の多くは初めて触れたものや使用したものでは症状がなく、使用し続けることで悪化するのです。その感作を皮膚でおこなわれたものが「経皮感作」と言います。経皮感作で有名なものは、数年前に話題となった「茶のしずく石鹸」に含まれた加水分解小麦(グルバール19S)やアメリカの子供に多いピーナッツアレルギーが挙げられます。
スギ花粉の場合は、『スギ花粉抗原は高分子で(皮膚の)角質層を通過できないから「(スギ)花粉皮膚炎」などと呼ぶ必要はない』という意見を耳にすることがあります。アトピー性皮膚炎など既存の皮膚トラブルがあり、それが花粉により一時的に増悪したと考えればいいのでは?という意見だと思います。
ただ、加水分解小麦の場合でも健常皮膚で肌トラブルがない人でも経皮感作されていることから、過度の洗顔や化粧品の刺激による皮膚バリア機能の障害があることで経皮感作されたと考えられています。スギ花粉でも同じようなメカニズムで皮膚炎を起こすことが考えられます。なので「(スギ)花粉皮膚炎」と言ってもいいのでは…と考えます。なぜ(スギ)としているかというと、シラカンバやブタクサによる皮膚炎もあるため「花粉皮膚炎」が一番しっくりくるネーミングじゃないでしょうか?

冬から春にかけて目の周り、頬、おでこなどに皮膚症状がみられた場合、スギ花粉による皮膚炎の可能性もあり、気をつけなくてはいけないと思います。花粉症があるなしは関係なく、スギ花粉が多く飛散している地域・場所では起こりうる皮膚炎ですので、気になるときは皮膚科専門医へ受診ください。

2015年1月26日月曜日

Joe Chindamo Trio - Joy of Standards

オーストラリアのピアニスト、ジョー・チンダモによるピアノ・トリオ。玄人好みのピアノ・トリオを量産している澤野工房による2000年録音作品。このシリーズは2002年にVol.2が録音されているので、このアルバムが好評だったためと思われます。

オーストラリアのジャズはあまりピンとこないというか(ジャネット・ザイデルも?)、南半球だと、ニュージーランドのダン・パピラニー(といってもイスラエル出身)ぐらいしか知らないのですが、ジョー・チンダモのピアノは爽やかで心地よく、適度な憂いもあるため、BGMに最適です。

チンダモがジャズにハマるきっかけは、オスカー・ピーターソン、ビル・エヴァンス、エロール・ガーナー、チック・コリア、ハービー・ハンコックなどを聴いていたこと、15歳のときにピアノを購入したことだそうです。18歳になって初めてピアノレッスンを受けたという遅咲きにみえる経歴ですが、6歳の頃からアコーディオンを嗜んでおり、音楽的な素養は十分あったのでしょう。

インタビューを読むとメロディーを大事にしていること、曲を再構築することに楽しみがあると答えており、メロディーメーカーとしてもなみなみならぬ自信を感じさせます。このアルバムでも《Charade》《I Fall In Love Too Easilly》《When I Fall In Love》などのスタンダードに混じってチンダモのオリジナル曲も3曲入っていますが、全く違和感ありません。



2015年1月24日土曜日

James Rhodes - Bullets & Lullabites

中古CD屋さんの特売コーナーでみつけた1枚。更にまとめ買い半額セールで、新品を250円ほどで購入してます。ジェームス・ローズというピアニストは”ロックスター・ピアニスト”という異名をもつイギリスのピアニストで、幼少時の虐待、自殺未遂、精神病棟への入院歴と妻と離婚…など幾多の困難を乗り越えて現在にいたるようだが、経歴もどんな演奏するかもわからないまま購入してしまいました。日本のWikipediaには彼の解説はなく、CDもこれだけのようです。シャーロックで人気のベネディクト・カンバーバッチとの対話やBSで放送された「心の旋律に耳を澄まして」というドキュメントがGoogle検索で引っかかってくる。
黒縁メガネに無精髭、ぼさぼさに伸びた髪はクラシックのピアニストにしては異質であるが、CDから流れる音楽は至極真っ当で、モシュコフスキー、アルカン、ブルーメンフェルト、ラフマニノフなど技巧派のピアニスト作品を散りばめている。CDはCD1 "Bullets"、CD2 "Lullabies"という2枚組のからなり、それぞれ午前、午後を表している。CD1枚あたり30〜40分程度の収録でLPのような曲数ですが、コンセプトを重視した作り…なのでしょう、きっと。 
"Bullets"は技巧が散りばめられた曲にベートーヴェンのピアノ・ソナタ18番スケルツォやショパンのピアノ・ソナタ第3番プレストなど、ただのピアノ小品集とは異なる選曲になっています。アルカンのグランド・ソナタでも破綻なく弾ききっており、技巧に自身がありそうな感じ(あくまで感じです)。 でも"Lullabies"の優しくゆるやかな演奏のほうが彼には合っているようです。ドビュッシーやラヴェルなどはとても思い入れを感じます。でも一番美しく響くのはショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章《ロマンツァ》ですね。
経歴などからはデヴィッド・ヘルフゴットやイングリッドフジ子ヘミングと同じような括りになりそうですが(毀誉褒貶がはっきり分かれそうという意味です)、純粋に楽譜に書かれた音を音楽を奏でるという「演奏」というよりは音符を通して自己を吐露する「音を紡ぐ」意味でとてもよい演奏と思います。BGMよりも自宅でしっとりと楽しむ音楽ではないでしょうか?生演奏などとても楽しめそうです。来日公演などないのでしょうか?



2015年1月22日木曜日

Paul Lewis - Schubert: Piano Sonata D.850, etc

このところの冷たい雨は外出をするのも嫌な気持ちにさせるのですが、なぜだかシューベルトが聴きたくなります。

シューベルトは苦手な作曲家の一人で、長いこと聴かず嫌いの状態が続いていました。村上春樹の「海辺のカフカ」にシューベルト《ピアノ・ソナタ第17番ニ長調》が登場し、彼のエッセイでアンスネスやイストミンのCDをすすめていることも知っていたのですが、聴かず嫌いは変わらずでした。と、過去形で書いているのは、ポール・ルイス(ポール・スミスと混同してしまうような名前です)の演奏がとても素晴らしかったので、シューベルトをもっと聴いてみようと思っているから。
シューベルトの音楽を端的に言い表すことは難しいのですが、心惹かれる旋律にあふれていても「気まぐれ」で「とりとめのない」印象を与え、どこか仄暗い感じの音楽になるのでしょうか?その中でもD.850のピアノ・ソナタはとりとめのなさが際立っている感じです。その「冗長」な音楽をポール・ルイスは、深い森のような陰鬱な(シューベルトの)暗闇へ連れて行くことなく、節度のある抑揚のとれた旋律で現実とシューベルトを結びつけてくれます。彼の師匠であるブレンデルの演奏に似ているのは知的で少し突き放したような淡々としたところですが、優しく包み込んでくれる優しさが異なっているようです。

冷たい雨の日はどうしてシューベルトをBGMにしたくなるのか…とポール・ルイスを聴きながら考えているところです。



2015年1月15日木曜日

Glenn Gould - Richard Strauss: Piano Sonata, etc.

グレン・グールド最後の録音であるリヒャルト・シュトラウスの美しいピアノ・ソナタ、5つの小品。リヒャルト・シュトラウスというと大管弦楽を駆使した壮麗な管弦楽やオペラをイメージしますが、個人的には初期の作品が好きです。とくにソナタはピアノ、ヴァイオリン、チェロといずれも佳作(と言っていいのかわかりませんが)で、とても気に入っています。その中でも17歳に作曲されたピアノ・ソナタはリヒャルト・シュトラウスとは思えない?愛らしい曲です。若書きの作品といってもそこはリヒャルト・シュトラウス、ちゃんと完成された作品になっています。もっと演奏されても良さそうなのにといつも思いながら聴いています。

グールドの演奏は、同時期のブラームス《4つのバラード》《2つのラプソディ》と同じように淡々とした乾いた響きによる冷たさと優しい旋律を奏でるときの儚さを併せ持った不思議な演奏です。若いころのグールドのような一気呵成の勢いはなく、良い意味での枯れた演奏...なのでしょうか。

今日のように寒い雨の日のBGMには、グールドお気に入りのリヒャルト・シュトラウスが最適です。

2015年1月6日火曜日

The Paul Smith Trio - Saratoga

遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。昨年は開業前からバタバタし、開業後も波に乗り切れないまま?あっという間に1年が過ぎてしまった感じです。本年も変わらず丁寧な診療を心がけていきますので、よろしくお願いいたします。

最近ブログが少し停滞気味になっているのは書くヒマがないほど忙しい…というわけでもなく、ちょっとサボり気味なだけでした、すみません。12月はなぜかクラシックのことばかり書いていたので、今月初めはジャズで...といいつつポール・スミス・トリオという変化球で行きたいと思います。今回紹介する《サラトガ》(1959)というこのアルバムは、映画の主題歌をテーマにした作品らしい…というのも、ライナーノートの寺島靖国氏が《サラトガ》(1937)という映画について延々と記載しているので間違いないはずです。でも肝心の映画がどんなものなのかわからない…。

1曲目は《Petticoat High》という軽快な曲で、ポール・スミスらしくていいです。変わった音色を奏でるのが《The Parks of Paris》で、ピアノがマンドリンのように奏でられてびっくりします。ちょっとゴッドファーザー愛のテーマのようでもあり、切ない曲調が気になります。これらはみなハロルド・アーレンという作曲家のもので、アーレンというとジュディー・ガーランド主演の《虹の彼方に》の有名な主題歌の作曲家でもあり、とてもよい曲を書いています。

アーレンってどんな映画の曲を書いているのか気になってWikipediaで確認したところ...サラトガって1959年に作られたミュージカルだったんですね!さすがWiki先生。すぐに検索できる良い時代になったと思いましたが、ライナーノート(1998年に書かれています)内容って…うーん、考えないことにします。《サラトガ》って映画もわかったことだし。ちなみにサラトガは(ネイティブ・アメリカン)イロクォイ族の言葉で「急流の場所」を指すそうです。南北戦争ではサラトガの戦いというのがあったようです。余談です。

今年もよろしくお願いします。