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2016年9月29日木曜日

少し疲れたときはポール・ルイスのベートーヴェンを

最近クラシックを聴く機会がほとんどなく、聴いたとしてもピアノ曲が多くなっている今日このごろ。論理的に演奏を比較したり、聴き分けるだけの耳を持ち合わせていないのですが、感覚的に好きなピアノの音色があり、最近はポール・ルイスがお気に入りです。

ポール・ルイスは1972年リバプール生まれ(年齢は私の一つ先輩)。父親は湾岸労働者であり音楽(とりわけクラシック)とは無縁の家庭ながら、8歳の頃には図書館でクラシックのレコードを借りていた彼は、12歳のときに正式なピアノ演奏を習い始めたそうです。いまや中堅ピアニストの中でも傑出した存在である彼の演奏の特徴は、一言で言うと「男性的な響きなのに柔らかく優しい」演奏です。曲をディフォルメしたり、自己(エゴ)をだすために特徴的な演奏をしないのは、恵まれたとはいえない環境で培ったクラシックへの愛情と作品への敬意がそうさせているのでしょうか?

iphoneに入れた彼のベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集とシューベルト・ピアノ・ソナタ選集は、ひととき通勤時のお供に聴いていました。正直に言ってベートーヴェンやシューベルトのピアノ・ソナタは得意でないのですが、彼の演奏だと心地よく響くため聴き通すことができます。ひとによっては個性に乏しいと感じるような空気感…それが最大の魅力だとおもいます。

ビエロフラーヴェク&BBC響と録音した、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集もピアノの響きがとても美しく非常に気に入っています(ときどきオケがうるさく感じる部分があるのですが…それを差し引いてもとても素敵な演奏です)。ちょっと疲れて「襟を正さず自然体で聴くベートーヴェン」を欲しているときはかならず聴いています。




2016年2月20日土曜日

赤ちゃんはバッハがお好き?

土曜日はあいにくの雨ですが、新宿で東京・東部支部合同学術大会があったため、仕事帰りに少しだけ参加してきました。医局の前教授夫妻や医局の先生方にお会いできてとてもよかったです。

今日の1曲は、バッハの無伴奏チェロ組曲(全曲)。チェロ奏者のレジェンドであるパブロ・カザルスにより発掘・蘇演され、昔のクラシック本の言葉を借りると「チェロの旧約聖書」(この場合、「新約聖書」はベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集)とまで言われる曲となりました。プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット(ブーレ・ガヴォット)、ジーグの6曲から編成される組曲が6曲で構成されており、6番のみいまは使用されない5弦楽器(チェロは4弦)を想定した作りになっています。番号が進むにつれて難易度があがり、5番(スコルダトゥーラという調弦をかえる奏法を使用する)を頂点としています。6番は深遠なアルマンドが美しい別次元の曲になっています。

なぜこの曲を選んだかというと、うちの子供(乳児)がこの曲を聴かせるとすやすやと眠るからなのです。少しむずかったりするときも、目が覚めたときでもこの曲を聴かせると落ち着いて静かになります。チェロの音域は男性の声に近く、チェロ組曲の曲調も落ち着くのかとても心地よいようです。この曲であれば何番でもよいようで、全曲リピートで聴かせています。大人からするとアルマンドが良さそうですが…まったく関係ないようです。

いろいろな演奏があるなかでもいちばんのお気に入りはアンヌ・ガスティネルによる演奏で、カザルスの歴史的名盤やチェロの伝導師エンリコ・マイナルディの深遠な深い演奏(古いサントリー山崎のCM「なにも引かない、なにも足さない」を地でいくようなモルトウイスキーのような漢字です)、中庸の美を地でいくようなポール・トルテュリエでもないようです。解説によるとガスティネルは2児の母であり、音にも母の優しさがこもっているのかな?なんて勝手に思いながら聴いています。







2016年2月9日火曜日

サティ《貧者(貧しき者)の夢想》

2016年になってからブログ更新していませんでした。遅くなりましたが今年もよろしくお願いします。1月は通常診療だけでなく、1月締め切りの依頼原稿が2件(「小児内科」、「爪アトラス」ともに期限内に脱稿しました)、関東信越厚生局からの開業新規指導など盛りだくさんの内容であっという間でした。

遅くなった年始めの1曲はエリック・サティ《貧者の夢想(貧しき者の夢想)》です。エリック・サティ…それはバブル真っ盛りの1980年代に空前のブームを巻き起こした、あのサティです。アンビエント・ミュージック(環境音楽)の提唱者であるブライアン・イーノが影響受けたという《家具の音楽》や象徴主義的な不思議な題名(《犬のためのぶよぶよとした前奏曲》や《胎児の干物》など)で知られていますが、とりわけ有名なのは《ジムノペディ》《グノシェンヌ》など簡素ながら甘美な旋律を持つとても美しい作品集です。

《貧者の夢想》は1900年作でシャンソン《ジュ・トゥ・ヴ》と同じ年です。チッコリーニやティボーテなどメジャーレーベルから出ているピアノ作品全集などには含まれておらず、高橋アキ、メルタネン、パスカル・ロジェ(EXTON)などが演奏している程度。詳細はわからないのですが、Wikipediaなどでは「Robert Cabyによる校訂」とあるので、断片的に残っていたのかもしれません。

《貧者の夢想》は簡潔ながらとても儚く美しい旋律を持った曲で、《ジムノペディ》、《グノシェンヌ》や《ジュ・トゥ・ヴ》とともにもっと聴かれてよい曲と思います。演奏はフィンランドのピアニスト、ヤンネ・メルタネンのものが一番しっとりとして好みです。よりサティのイメージに近い(アンビエント的でドライな)演奏は高橋アキなのかもしれないですが…。「貧者」はサティ本人のあだ名だったようで、彼の夢とはなんだったのでしょうか?「貧しきもの、寂しきものの慰めは夢想である」(三太郎の日記)、大正時代の哲学者阿部次郎も同じ言葉を書き記していますが、その思想は極限までに昇華されたこの曲と同じものだったのでしょうか。興味は尽きません。

サティにとっての《家具の音楽》は数小節の音の反復(ミニマル・ミュージック)であり、《貧者の夢想》のような曲は決してアンビエント・ミュージックではない、といつも思いながら聴いています。

2015年9月8日火曜日

雨の日のカノン

このところずっと雨が続いており、今年の夏はあっという間に過ぎていったようです。今日・明日は台風の影響もあり、時折強い雨が降っています。こんなに雨の日が続くと少し気が滅入るのですが、午後は久々にアン・バートンを流してまったりとしています。

今日の話題はアン・バートンではなく、パッヘルベルのカノンです。この曲も演奏スタイルによってはかなり変化があるのですが、弦楽オーケストラでゆったりと奏でるカノンは優雅でありなんとも言えない心地よさがあります。

そんなパッヘルベルのカノンで一番ゆっくりと演奏しているのは?と考えると…ゆっくりで有名なのはパイヤール盤なのですが、知りうる限りでは、ドゥアッテ盤が一番ゆったりとした演奏だと思います。9分2秒という時間をかけて間延びしないように丁寧に演奏しているこの演奏は、パイプオルガンで奏でているような通奏低音が印象的です。いつもはイル・ジャルディーノ・アルモニコのようなスッキリとした古楽アンサンブルを好むのですが、今日のような雨のまったりした午後にはゆっくりしたドゥアッテの演奏が恋しくなります。

指揮者のローランド・ドゥアッテはウィキペディア(フランス語)によると、フランスのヴァイオリニスト(独学!)・指揮者で、パリ・コレギウム・ムジクムを設立し、数多くのバロック音楽を録音しているようです。

この演奏が収録されているCDは、Accordレーベル原盤なのですが、なぜかオーリアコンブ(著名なフランスの指揮者)のバロック音楽名曲集の中に1曲だけドゥアッテ指揮のパッヘルベルのカノンが入っています。きっと一番ゆったりとしたカノンだと思います。






2015年7月8日水曜日

いちばん美しいピアノ曲はなに?

梅雨空が続いています。クリニックは混んだり、空いてたり読めない状況です。のんびりいきましょう。いちばん美しいピアノ曲(クラシック)は?と聞かれると答えるのが難しいのですが、全体的な雰囲気がよいのと、ひとつの旋律だけでなく曲全体が美しくまとまっている曲…と考えると、最近のお気に入りはプーランクの《メランコリー》です。

プーランクは20世紀初頭から中期に活躍したフランスの作曲家で、フランス6人組と呼ばれるグループの中で一番有名なひとでもあります。「フランスのモーツァルト」(フレーズだけは「浪速のモーツァルト」キダ・タロー先生に似てますが…)とも言われ、洒脱な曲が多く、ヒッチコック監督の「ロープ」という映画でも3つの常動曲が使用されています。この「ロープ」という映画は1948年当時としては画期的なゲイを示唆する描写が多く、さすがヒッチコックとニヤリとさせられます。

プーランクはちょっとうるさくって不協和音があって聴きづらい曲とすごく甘くてとろけるような曲の落差が激しいのですが、《メランコリー》は6分間を通して同じフレーズを転調しながら漂うように甘美な音色を奏でるのですが、長調なのに全体的には悲しげな曲調になっています。これはプーランクの親戚・友人の死や第2次世界大戦の暗い影を反映しているとも言われますがどうなのでしょうか?

ポール・クロスリー、エリック・ル・サージュ、アレクサンドル・タローいずれも甲乙つけがたい名演ですが、ドビュッシーやラベルではさらりと即物的な印象のピアノを聴かせるポール・クロスリーの思いの外しっとりした演奏が最近のお気に入りです。


2015年4月10日金曜日

Guiomar Novaes - Beethoven: Piano Concerto No.5 in E-flat major, op.73 "Emperor"

最近しなくなった事というと、映画を観ること、交響曲や管弦楽曲などをゆっくり聴かなくなったこと…でしょうか。学生の頃は映画を観る機会が多かったのですが、救命やオンコールで呼ばれる日々を過ごすようになった頃から減ってます。交響曲や管弦楽曲などの大音響の曲は…(名曲喫茶ではないので)待合室のBGMとしてもなかなか流すこともできないので、必然的に減っているのでしょうか。

そんな中、久しぶりにベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番を聴いて懐かしい思い出が蘇ったので書こうと思います。この曲は《皇帝》という名前がついており、冒頭が非常に壮麗で男性的な感じがあり《皇帝》らしい演奏が好まれているようなのですが…私がイメージするこの曲は第2楽章なので、むしろ優しく包み込まれるような暖かみのある演奏が好きなのです。壮麗で華美な両端楽章にはさまれた愛らしい第2楽章が好きなのは、「ピクニック at ハンギングロック」(オーストラリア時代のピーター・ウィアー作品!)という映画による影響が大きく、この曲を聴くたびにボッティチェリの天使と形容されたミランダのスローモーションを思い出してしまいます。

そんな刷り込みで聴く《皇帝》は思い入れたっぷりに第2楽章を演奏してくれるものが好きで、このギオマール・ノヴァエスの演奏を始め、カラヤン&ワイセンベルク(ライブ)、マルグリット・ロン、ソロモンなどなどオールドタイマーな選択肢になってしまいます。ギオマール・ノヴァエスはブラジルのピアニストで、少し癖がある(ようなのですが)非常に優しいピアノの音色で美しい旋律を際立たせてくれます。アメリカの廉価盤レーベル(Vox box)の古い録音ですが、とても聴きやすいです。

2015年3月10日火曜日

患者番号が1500を超えました

昨年の11月に患者番号が1000を超えてから4ヶ月と少し、ようやく?1500まで到達しました。「ここに皮膚科があったなんて知らなかった」と言われること約1年...ホームページ(Webサイト)を中心にゆっくりながら新規の患者さんがコンスタントに来ていただけることに感謝しております。

皮膚症状と生活スタイル、薬の組成・性状(外用剤であれば成分・添加物、内服であればどのような系統なのか...など)などを組み合わせて、可能な限り(医療に100%や絶対ということはないのは重々承知です)速やかに皮膚の状態が改善する方向性を定めていきたいと思い、日々の診療をしています。

そんなときに思い浮かぶ演奏家はチェロの伝導師エンリコ・マイナルディです。ゆったりとしたテンポで朴訥な歩みながら深く暖かみがあるチェロの音色を聴くたびに、こんな演奏のように自分も診察できたらと思います。マイナルディにはバッハの無伴奏チェロ組曲の名演(2種類)もありますが、一番好きなのはザルツブルク音楽祭でカルロ・ゼッキのピアノで奏でたシューベルトの《アルペジオーネ・ソナタ》です。1959年のライブ音源で、録音マイクが非常に近接しているためかチェロの響きが非常に生々しく、マイナルディの息づかいや鼻歌
も聴こえてきます。

シューベルトは得意な方ではなく、アルペジオーネ・ソナタもロストロポーヴィチの演奏を小さいころによく聴いたな...程度の感想なのですが、マイナルディの重くゆったりと語りかけるようなチェロの響きはいつ聴いても心に染み渡り、とても好きな演奏です。

「わたしの信条と目標は音楽に奉仕することであって、自分自身を見(魅)せるために音楽を利用することではありません」というマイナルディの言葉は、音楽を診療に置き換えると私の信条・目標になります。奇を衒わず、正攻法で医療に携わる...これからもゆっくりと(そして着実に)診療していきたいと思いました。



2015年2月25日水曜日

ホームページのリニューアル(その1)とステファン・アスケナーゼ

かれこれ2週間以上、ホームページ(Webサイト)と格闘しています。発端はGoogleのウェブマスターツールで「モバイルユーザビリティ上で重大な問題が検出されました」と指摘されたからです。ホームページをスマホ対応にしていなかったこともあるのですが、現行のホームページ・ビルダーだとスマホサイトを自由にいじれないこともあって、一念発起して新たに作ることにしました、と作り始めて...いろいろな障害?にぶち当たって今日まで来ています。

第一に自分でホームページ(Webサイト)をつくること...学会発表のスライドを作ることが好きならば、簡単に作ることのできるホームページ・ビルダーがあるので大丈夫...なはず。

次にPCが得意...NECのPCシリーズやMSX(懐かしい)から始まって、Windows3.1、Mac Classicの頃からパソコンに慣れ親しんできた...といっても知らないことが多い。

最後に一番大事なのは美的センス...こればかりはいまさら磨くことも難しい大きな壁です。

こうした難関を乗り越え、なんとか新しいサイトを作り上げたのですが...そこにはぬりかべのごとく大きな壁が立ちふさがっていたのです。(つづく)

2月はステファン・アスケナーゼの1950年代にグラモフォンに録音したショパン作品をBGMにしています。いまも現役の名ピアニスト兼指揮者のウラディーミル・アシュケナージと似た名前で打ち間違いと思われそうですが、アスケナーゼです。マルタ・アルゲリッチや内田光子といった現代でも最高峰といわれるピアニストたちのお師匠さんです。録音の古さも相まってか、暖かく、緩やかな音色でとても心地よいです。ホームページで煮詰まった頭もかなりすっきり...します。


2015年2月9日月曜日

Jorge Bolet - Live Liszt, Franck, Mendelssohn

2月はロマン派と言われる作曲家の音楽を巨匠・名匠の演奏で…という趣旨でアルバムを選んでいます。ホルヘ・ボレットはキューバ出身のピアニストで、フィラデルフィアのカーティス音楽院でゴドフスキー、サパートンに師事、さらにリストの弟子であるローゼンタールからも指導を受けており、リスト直系の孫弟子であることも知られています。これはボレットの死後発売された「未発表ライブ集」でメンデルスゾーン《前奏曲とフーガ》第1曲、フランク《前奏曲。コラールとフーガ》、リスト《ノルマの回想》の3曲です。フランクとリストは演奏時間が20分(メンデルスゾーンでも10分)を要する難曲ばかりです。

ボレットはGHQの一員として日本に滞在したことがあるそうですが、本職のピアノでは1970年代に入るまで無視されていた「忘れられていた天才」だったそうです。私がクラシックを聴き始めた80年代はすでにLONDON(DECCA)レーベルから次々と新譜が発売される人気ピアニストでしたが、そんな彼も長い不遇な時代があったなど全く知りませんでした。

メンデルスゾーン《前奏曲とフーガ》第1曲は遠い昔に聴いた時はつまらないと感じたのですが、この演奏ではバッハを模した厳格な曲を叙情的にスッキリと演奏していてとてもよい曲だと再確認させてくれました。フランクも堅苦しさがないとてもロマンティックな演奏で素敵です。リストはベッリーニのオペラ《ノルマ》の独唱、合唱を主題としたヴィルトゥオーソな曲ですが、ボレットは技巧を感じさせない流礼な演奏です。たまにはこんなロマンティックな曲がBGMなのもいいですね。

これは神保町の古本市で500円で購入しました。


2015年1月24日土曜日

James Rhodes - Bullets & Lullabites

中古CD屋さんの特売コーナーでみつけた1枚。更にまとめ買い半額セールで、新品を250円ほどで購入してます。ジェームス・ローズというピアニストは”ロックスター・ピアニスト”という異名をもつイギリスのピアニストで、幼少時の虐待、自殺未遂、精神病棟への入院歴と妻と離婚…など幾多の困難を乗り越えて現在にいたるようだが、経歴もどんな演奏するかもわからないまま購入してしまいました。日本のWikipediaには彼の解説はなく、CDもこれだけのようです。シャーロックで人気のベネディクト・カンバーバッチとの対話やBSで放送された「心の旋律に耳を澄まして」というドキュメントがGoogle検索で引っかかってくる。
黒縁メガネに無精髭、ぼさぼさに伸びた髪はクラシックのピアニストにしては異質であるが、CDから流れる音楽は至極真っ当で、モシュコフスキー、アルカン、ブルーメンフェルト、ラフマニノフなど技巧派のピアニスト作品を散りばめている。CDはCD1 "Bullets"、CD2 "Lullabies"という2枚組のからなり、それぞれ午前、午後を表している。CD1枚あたり30〜40分程度の収録でLPのような曲数ですが、コンセプトを重視した作り…なのでしょう、きっと。 
"Bullets"は技巧が散りばめられた曲にベートーヴェンのピアノ・ソナタ18番スケルツォやショパンのピアノ・ソナタ第3番プレストなど、ただのピアノ小品集とは異なる選曲になっています。アルカンのグランド・ソナタでも破綻なく弾ききっており、技巧に自身がありそうな感じ(あくまで感じです)。 でも"Lullabies"の優しくゆるやかな演奏のほうが彼には合っているようです。ドビュッシーやラヴェルなどはとても思い入れを感じます。でも一番美しく響くのはショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章《ロマンツァ》ですね。
経歴などからはデヴィッド・ヘルフゴットやイングリッドフジ子ヘミングと同じような括りになりそうですが(毀誉褒貶がはっきり分かれそうという意味です)、純粋に楽譜に書かれた音を音楽を奏でるという「演奏」というよりは音符を通して自己を吐露する「音を紡ぐ」意味でとてもよい演奏と思います。BGMよりも自宅でしっとりと楽しむ音楽ではないでしょうか?生演奏などとても楽しめそうです。来日公演などないのでしょうか?



2015年1月22日木曜日

Paul Lewis - Schubert: Piano Sonata D.850, etc

このところの冷たい雨は外出をするのも嫌な気持ちにさせるのですが、なぜだかシューベルトが聴きたくなります。

シューベルトは苦手な作曲家の一人で、長いこと聴かず嫌いの状態が続いていました。村上春樹の「海辺のカフカ」にシューベルト《ピアノ・ソナタ第17番ニ長調》が登場し、彼のエッセイでアンスネスやイストミンのCDをすすめていることも知っていたのですが、聴かず嫌いは変わらずでした。と、過去形で書いているのは、ポール・ルイス(ポール・スミスと混同してしまうような名前です)の演奏がとても素晴らしかったので、シューベルトをもっと聴いてみようと思っているから。
シューベルトの音楽を端的に言い表すことは難しいのですが、心惹かれる旋律にあふれていても「気まぐれ」で「とりとめのない」印象を与え、どこか仄暗い感じの音楽になるのでしょうか?その中でもD.850のピアノ・ソナタはとりとめのなさが際立っている感じです。その「冗長」な音楽をポール・ルイスは、深い森のような陰鬱な(シューベルトの)暗闇へ連れて行くことなく、節度のある抑揚のとれた旋律で現実とシューベルトを結びつけてくれます。彼の師匠であるブレンデルの演奏に似ているのは知的で少し突き放したような淡々としたところですが、優しく包み込んでくれる優しさが異なっているようです。

冷たい雨の日はどうしてシューベルトをBGMにしたくなるのか…とポール・ルイスを聴きながら考えているところです。



2015年1月15日木曜日

Glenn Gould - Richard Strauss: Piano Sonata, etc.

グレン・グールド最後の録音であるリヒャルト・シュトラウスの美しいピアノ・ソナタ、5つの小品。リヒャルト・シュトラウスというと大管弦楽を駆使した壮麗な管弦楽やオペラをイメージしますが、個人的には初期の作品が好きです。とくにソナタはピアノ、ヴァイオリン、チェロといずれも佳作(と言っていいのかわかりませんが)で、とても気に入っています。その中でも17歳に作曲されたピアノ・ソナタはリヒャルト・シュトラウスとは思えない?愛らしい曲です。若書きの作品といってもそこはリヒャルト・シュトラウス、ちゃんと完成された作品になっています。もっと演奏されても良さそうなのにといつも思いながら聴いています。

グールドの演奏は、同時期のブラームス《4つのバラード》《2つのラプソディ》と同じように淡々とした乾いた響きによる冷たさと優しい旋律を奏でるときの儚さを併せ持った不思議な演奏です。若いころのグールドのような一気呵成の勢いはなく、良い意味での枯れた演奏...なのでしょうか。

今日のように寒い雨の日のBGMには、グールドお気に入りのリヒャルト・シュトラウスが最適です。

2014年12月23日火曜日

Efrem Kurtz &PO - Tchaikovsky "Casse-Noisette (The Nutcracker)" Op.71

12月に入ったと思ったらあっという間に23日になってしまい、明日はクリスマス・イブです。仕事が劇的に忙しくなった…ということもなく、まだまだ頑張らないといけないと思いつつ日にちだけが過ぎていました。

クリスマスというわけでもないのですが、クリスマスに因んだ音楽となると、バッハやオネゲルにはクリスマス・オラトリオがありますが、クリニックのBGMとしてはちょっと…なので、チャイコフスキーの《くるみ割り人形》を選んでみました。

《くるみ割り人形》はバレエ音楽で、舞台はドイツのシュタールバウム家。主人公クララがクリスマス・イブの夜に見る夢?のお話です。大学生のときに姉夫婦と留学先のLA郊外でクリスマスを過ごした際、
《くるみ割り人形》のバレエを観たことがあります(印象的だったのはバレエでなく、帰り道でとても楽しそうに踊りながら帰っている女の子が本当に嬉しそうだったことですが…)

音楽は作曲家自身で編纂したバレエ組曲(Op.71a)があり、オーケストラで演奏されることも多く知られているのですが、この組曲にはなぜか《くるみ割り人形》で一番素敵で美しい曲が入っておらず、ちょっと残念な組曲だと思っています。《くるみ割り人形》は「パ・ド・ドゥ」から「終幕のワルツとアポテオーズ」がクライマックスで、特に「パ・ド・ドゥ」はチャイコフスキーの曲の中でも美しい曲のひとつなのですから(ソ連の怪物指揮者スヴェトラーノフの「パ・ド・ドゥ」はまさに天上の音楽でした)。このエフレム・クルツ盤ではちゃんと「パ・ド・ドゥ」も入ったハイライト盤なのでとても気に入っています。

クルツはユダヤ系ロシア人で戦前・戦後にアメリカやイギリスで活躍した指揮者。録音が少ないため今では忘れられた指揮者の一人になってしまっていますが、この《くるみ割り人形》はとても穏やかで美しく、バレエ帰りに踊っている女の子を思い出させる演奏です。



2014年12月12日金曜日

看板を設置しました

4月に開業してからWebサイト(ホームページ)と郵便局の封筒を除いてほとんど宣伝ない状態でしたが、とうとう…というかようやくJR市ヶ谷駅に 看板を設置しました。

最近はホームページからの集患が一番だと言われていて、確かにうちのクリニックでも50%以上がホームページをみて受診されています。このホームページは私自身が作成しているので、費用がかからず費用対効果は抜群です。ただ年齢層に偏りがあるのではないかな…と思うところもありました。

一方、駅看板は不特定多数のひとがみるため費用の割に集患が良くないと言われるのですが、駅の近くに皮膚科があることすら認識されないといけないということもあり、スポットでもよいので駅看板を設置したいと思っていたところ、たまたま良い場所に空きが出たので設置することにしました。

昔ながらの診療所の看板(野暮ったい感じ)ですが、ひとりでも多くの人に認知してもらえれば…と思っていたところ、午後の診療のときに看板を見て受診してくださった患者さんがいて嬉しかったです。

まだまだ認知度の低いクリニックなので、少しずつ認知していただけるようにがんばらないと。


2014年12月10日水曜日

pfitizner: Kleine Sinfonie G-dur, op.44

1869年生まれ、遅れてきたロマン主義者と呼ばれるハンス・プフィッツナーの《小交響曲》作品44。1939年に作曲され、フルトヴェングラー指揮(録音があるなら聴いてみたい)で初演されています。

プフィッツナーはとてもきれいな旋律の曲が多く、ヴァイオリン協奏曲などは一度だけ実演を聴いたのですが、もっと演奏されてもいいのではと思わせる名曲です。プフィッツナーの中でも旋律が美しいのがこの《小交響曲》と《ヴァイオリンとチェロと小管弦楽のための二重奏曲》作品43で、《小交響曲》はとても愛らしく、少し感傷的でありながら仄かな明るさをもっている不思議な曲です。

今日の午前中はとても空いていて、のんびりとした診察室にこの《小交響曲》が流れていました。とても素敵な曲なのですが...BGMで流すには曲調がちょっと単調で、キャッチーな旋律がないので…ちょっとさびしいかなと思ったり。自宅でゆったりと聴くにはとってもいい曲なのに...「手に取るなやはり野に置け蓮華草」…そんな言葉が頭に浮かびました。

午後はMark Murphyを流すことにしました...渋いかな。

2014年12月5日金曜日

Francesco Tristano - bachCage

今秋台風が東京に接近した日の夜、先客がはけてガランとした店内でフランチェスコ・トリスターノのブスクスフーデとバッハを聴いた。その店のソムリエさんがトリスターノ、テクノ(とモーツァルトのピアノ協奏曲)をこよなく愛していると聞いたのもその日だった。それ以来、トリスターノという名前はグールドと同じようなひとつの記号として認識するようになり、改めて聴いてみようと思い立った。

フランチェスコ・トリスターノは1981年ルクセンブルク生まれのピアニスト(キーボーディスト)で、クラシックからテクノ、DJまで幅広い活躍をしている。同年代にはシュタットフェルトやフレイといったバッハ(と現代音楽)を得意としているピアニストがおり、いずれもグレン・グールド2度目の《ゴールドベルグ変奏曲》を録音した1981年(あるいはその前年)に生を受けている。

バッハの曲をピアノで演奏する際、避けて通れないほど大きく高い壁であるグールドの演奏は、他の演奏を寄せ付けることなく孤高の存在として遺されている。トリスターノやフレイはバッハにテクノなどのデジタル的な要素を加え、ケージあるいはブーレーズといった現代音楽の曲を挟むことでより普遍的なものにしている。それはグールドの演奏を意識するのではなく自然と昇華しているかのように。

トリスターノの自作はゴールドベルク変奏曲のアリアのように最初と最後(実際はバッハのメヌエットが最後)に配置し、その中にバッハとケージの曲を挟み込んでいる。バッハの規則性をもったかっちりとした音楽とケージ初期作品(《the seasons (1947)》、《in a landscape (1948)》など)ながらすでに偶然性を感じさせ、音が少なくスカスカな印象をもたせる音楽が交互に演奏されることで、バッハ、ケージの曲に深みを与えている。

待合室のBGMとなるとケージがどのように聴こえるか心配だけど、少しずつチャレンジしていこうかな。



2014年12月1日月曜日

Claire-Marie Le Guay - Haydn-Mozart L'esprit concertant Vol.3

師走初日の今日は、朝から冷たい雨が降っています。4月に開業して12月になるまであっという間だったと思いつつ、こんな雨の日にはクレール=マリ・ル・ゲのモーツァルトとハイドンのピアノ・ソナタ集を聴いてます。

これはモーツァルトイヤーの2006年から録音が開始され、2008年にこの第3集が発売されてぱったりと音沙汰のなくなったシリーズです。ル・ゲは超絶技巧?が何かと話題になっていたピアニストですが、ハイドンとモーツァルトでは初期と成熟期の作品を交互に織り交ぜながら演奏するスタイルを取っており、そこには「ミラー・ゲーム」という副題とともに意図的なものがあるようです。少し独特でゆったりとしたテンポで弾かれるハイドンは聴きやすく、気に入っています。モーツァルトもK.333など軽やかな曲でも残響の多い音でしっかりと演奏しており、雨のクリニックには最適な1枚だと思います。続きが出ないのは残念ですが、クラシックでは全集にならずに終わるシリーズも多いので…やっぱり売上でしょうか?



2014年4月22日火曜日

Arthur Grumiaux - Lekeu: Violin Sonata in G major

CDは今も昔も中古レコード店で購入することが多く、このCDも今は亡き中古レコード店ハンター「銀座ソニービル店」で、中学生の頃に購入したものです。当時はルクーなどという作曲家も知らず、グリュミオーというヴァイオリニストは有名だということと、新古品で未開封CDだったので購入したのですが、燃え盛る若さと情熱を感じさせる、躍動感あふれる曲で、ルクーという作曲家が好きになった1枚です。ギョーム・ルクーは腸チフスで24歳の若さで夭折したベルギーの作曲家で、ヴァイオリン・ソナタは21歳の時の作品。数多あるヴァイオリン・ソナタの中でもお気に入りの曲のひとつです。ちなみにグリュミオーは2度目の録音で、1度目の演奏が素晴らしいとよく言われていますが、思い出・刷り込みの演奏なので、この演奏が一番好きです。併録のイザイとヴュータンの曲も素敵です。

腸チフスというといつもにエゴン・シーレを連想してしまうのですが、彼はスペイン風邪で亡くなっていたので、こちらも勝手な刷り込み(思い込み)でしょうか。

2014年4月14日月曜日

Faure: Orchestral Music - Y.P. Tortelier: BBC philhermonic

ポール・トルトゥリエの息子ヤン・パスカルがBBCフィルを指揮したアルバム。「パヴァーヌ」は合唱なしです(同じシャンドスレーベルにはアルスター管を指揮したフォーレもあり、「パヴァーヌ」は合唱付きでありました)。このアルバムにはキャスリン・ストットのピアノで「ピアノと管弦楽のためのバラード」があり、全体的に落ち着いた感じで午前中の診療所には最適です。

2014年4月11日金曜日

Chausson: Poème, Piano Trio, Pièce, Andante & Allegro

クラシックの選曲がイマイチな感じだったので、急遽入れ替えしてみました。

エルネスト・ショーソンはフランスの作曲家。彼の室内楽曲集といっても、最も有名な「コンセール」はなく、ヴァイオリンと管弦楽のための「詩曲」のヴァイオリンとピアノ五重奏版が入っています。思い返せば、ショーソン、ルクー、フォーレといった作曲家の室内楽がとても好きな時期がありました。少し仄暗く、果てなく紡がれる切ない旋律がたまりませんでした。いま聴き直してみるとチェロとピアノのための小品(作品39)がいちおしかな?