2016年になってからブログ更新していませんでした。遅くなりましたが今年もよろしくお願いします。1月は通常診療だけでなく、1月締め切りの依頼原稿が2件(「小児内科」、「爪アトラス」ともに期限内に脱稿しました)、関東信越厚生局からの開業新規指導など盛りだくさんの内容であっという間でした。
遅くなった年始めの1曲はエリック・サティ《貧者の夢想(貧しき者の夢想)》です。エリック・サティ…それはバブル真っ盛りの1980年代に空前のブームを巻き起こした、あのサティです。アンビエント・ミュージック(環境音楽)の提唱者であるブライアン・イーノが影響受けたという《家具の音楽》や象徴主義的な不思議な題名(《犬のためのぶよぶよとした前奏曲》や《胎児の干物》など)で知られていますが、とりわけ有名なのは《ジムノペディ》《グノシェンヌ》など簡素ながら甘美な旋律を持つとても美しい作品集です。
《貧者の夢想》は1900年作でシャンソン《ジュ・トゥ・ヴ》と同じ年です。チッコリーニやティボーテなどメジャーレーベルから出ているピアノ作品全集などには含まれておらず、高橋アキ、メルタネン、パスカル・ロジェ(EXTON)などが演奏している程度。詳細はわからないのですが、Wikipediaなどでは「Robert Cabyによる校訂」とあるので、断片的に残っていたのかもしれません。
《貧者の夢想》は簡潔ながらとても儚く美しい旋律を持った曲で、《ジムノペディ》、《グノシェンヌ》や《ジュ・トゥ・ヴ》とともにもっと聴かれてよい曲と思います。演奏はフィンランドのピアニスト、ヤンネ・メルタネンのものが一番しっとりとして好みです。よりサティのイメージに近い(アンビエント的でドライな)演奏は高橋アキなのかもしれないですが…。「貧者」はサティ本人のあだ名だったようで、彼の夢とはなんだったのでしょうか?「貧しきもの、寂しきものの慰めは夢想である」(三太郎の日記)、大正時代の哲学者阿部次郎も同じ言葉を書き記していますが、その思想は極限までに昇華されたこの曲と同じものだったのでしょうか。興味は尽きません。
サティにとっての《家具の音楽》は数小節の音の反復(ミニマル・ミュージック)であり、《貧者の夢想》のような曲は決してアンビエント・ミュージックではない、といつも思いながら聴いています。
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