このところの冷たい雨は外出をするのも嫌な気持ちにさせるのですが、なぜだかシューベルトが聴きたくなります。
シューベルトは苦手な作曲家の一人で、長いこと聴かず嫌いの状態が続いていました。村上春樹の「海辺のカフカ」にシューベルト《ピアノ・ソナタ第17番ニ長調》が登場し、彼のエッセイでアンスネスやイストミンのCDをすすめていることも知っていたのですが、聴かず嫌いは変わらずでした。と、過去形で書いているのは、ポール・ルイス(ポール・スミスと混同してしまうような名前です)の演奏がとても素晴らしかったので、シューベルトをもっと聴いてみようと思っているから。
シューベルトの音楽を端的に言い表すことは難しいのですが、心惹かれる旋律にあふれていても「気まぐれ」で「とりとめのない」印象を与え、どこか仄暗い感じの音楽になるのでしょうか?その中でもD.850のピアノ・ソナタはとりとめのなさが際立っている感じです。その「冗長」な音楽をポール・ルイスは、深い森のような陰鬱な(シューベルトの)暗闇へ連れて行くことなく、節度のある抑揚のとれた旋律で現実とシューベルトを結びつけてくれます。彼の師匠であるブレンデルの演奏に似ているのは知的で少し突き放したような淡々としたところですが、優しく包み込んでくれる優しさが異なっているようです。
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