1月下旬になりスギ花粉が気になる季節になってきました。花粉症とは杉などの花粉がアレルゲンとなってアレルギー性鼻炎を発症するものを指し、主に耳鼻科領域の病気と思われがちですが、肌トラブルの原因になることも多く、最近では「(スギ)花粉皮膚炎」なる言葉も聞かれるようになりました。
ただこの「(スギ)花粉皮膚炎」はまだ皮膚科のなかではコンセンサスを得た疾患名ではありません。キャッチャーなフレーズなので汎用されやすいですが、メカニズムや原因などからふさわしい名前かどうかまだまだ議論の余地があるところです。個人的にはわかりやすく、説明しやすいので良いと思います。
「(スギ)花粉皮膚炎」は東京医科歯科大学病院医学部皮膚科の横関博雄教授が提唱したもので、2010年前後より耳にするようになりました。この皮膚炎の大きなポイントはスギ花粉による経皮感作のメカニズムであり、そのことについて否定的な意見を仰る《高名な皮膚科医》の意見を聞いたこともあります。
「感作」とは、「生体に特定の抗原を与え、同じ抗原の再刺激に感じやすい状態にすること(デジタル大辞林)」となっていますが、ざっくり言うと「からだの拒否反応」なのです。なのでかぶれ(接触皮膚炎)の多くは初めて触れたものや使用したものでは症状がなく、使用し続けることで悪化するのです。その感作を皮膚でおこなわれたものが「経皮感作」と言います。経皮感作で有名なものは、数年前に話題となった「茶のしずく石鹸」に含まれた加水分解小麦(グルバール19S)やアメリカの子供に多いピーナッツアレルギーが挙げられます。
スギ花粉の場合は、『スギ花粉抗原は高分子で(皮膚の)角質層を通過できないから「(スギ)花粉皮膚炎」などと呼ぶ必要はない』という意見を耳にすることがあります。アトピー性皮膚炎など既存の皮膚トラブルがあり、それが花粉により一時的に増悪したと考えればいいのでは?という意見だと思います。
ただ、加水分解小麦の場合でも健常皮膚で肌トラブルがない人でも経皮感作されていることから、過度の洗顔や化粧品の刺激による皮膚バリア機能の障害があることで経皮感作されたと考えられています。スギ花粉でも同じようなメカニズムで皮膚炎を起こすことが考えられます。なので「(スギ)花粉皮膚炎」と言ってもいいのでは…と考えます。なぜ(スギ)としているかというと、シラカンバやブタクサによる皮膚炎もあるため「花粉皮膚炎」が一番しっくりくるネーミングじゃないでしょうか?
冬から春にかけて目の周り、頬、おでこなどに皮膚症状がみられた場合、スギ花粉による皮膚炎の可能性もあり、気をつけなくてはいけないと思います。花粉症があるなしは関係なく、スギ花粉が多く飛散している地域・場所では起こりうる皮膚炎ですので、気になるときは皮膚科専門医へ受診ください。
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