2014年12月10日水曜日

pfitizner: Kleine Sinfonie G-dur, op.44

1869年生まれ、遅れてきたロマン主義者と呼ばれるハンス・プフィッツナーの《小交響曲》作品44。1939年に作曲され、フルトヴェングラー指揮(録音があるなら聴いてみたい)で初演されています。

プフィッツナーはとてもきれいな旋律の曲が多く、ヴァイオリン協奏曲などは一度だけ実演を聴いたのですが、もっと演奏されてもいいのではと思わせる名曲です。プフィッツナーの中でも旋律が美しいのがこの《小交響曲》と《ヴァイオリンとチェロと小管弦楽のための二重奏曲》作品43で、《小交響曲》はとても愛らしく、少し感傷的でありながら仄かな明るさをもっている不思議な曲です。

今日の午前中はとても空いていて、のんびりとした診察室にこの《小交響曲》が流れていました。とても素敵な曲なのですが...BGMで流すには曲調がちょっと単調で、キャッチーな旋律がないので…ちょっとさびしいかなと思ったり。自宅でゆったりと聴くにはとってもいい曲なのに...「手に取るなやはり野に置け蓮華草」…そんな言葉が頭に浮かびました。

午後はMark Murphyを流すことにしました...渋いかな。

2014年12月5日金曜日

Francesco Tristano - bachCage

今秋台風が東京に接近した日の夜、先客がはけてガランとした店内でフランチェスコ・トリスターノのブスクスフーデとバッハを聴いた。その店のソムリエさんがトリスターノ、テクノ(とモーツァルトのピアノ協奏曲)をこよなく愛していると聞いたのもその日だった。それ以来、トリスターノという名前はグールドと同じようなひとつの記号として認識するようになり、改めて聴いてみようと思い立った。

フランチェスコ・トリスターノは1981年ルクセンブルク生まれのピアニスト(キーボーディスト)で、クラシックからテクノ、DJまで幅広い活躍をしている。同年代にはシュタットフェルトやフレイといったバッハ(と現代音楽)を得意としているピアニストがおり、いずれもグレン・グールド2度目の《ゴールドベルグ変奏曲》を録音した1981年(あるいはその前年)に生を受けている。

バッハの曲をピアノで演奏する際、避けて通れないほど大きく高い壁であるグールドの演奏は、他の演奏を寄せ付けることなく孤高の存在として遺されている。トリスターノやフレイはバッハにテクノなどのデジタル的な要素を加え、ケージあるいはブーレーズといった現代音楽の曲を挟むことでより普遍的なものにしている。それはグールドの演奏を意識するのではなく自然と昇華しているかのように。

トリスターノの自作はゴールドベルク変奏曲のアリアのように最初と最後(実際はバッハのメヌエットが最後)に配置し、その中にバッハとケージの曲を挟み込んでいる。バッハの規則性をもったかっちりとした音楽とケージ初期作品(《the seasons (1947)》、《in a landscape (1948)》など)ながらすでに偶然性を感じさせ、音が少なくスカスカな印象をもたせる音楽が交互に演奏されることで、バッハ、ケージの曲に深みを与えている。

待合室のBGMとなるとケージがどのように聴こえるか心配だけど、少しずつチャレンジしていこうかな。



2014年12月1日月曜日

Claire-Marie Le Guay - Haydn-Mozart L'esprit concertant Vol.3

師走初日の今日は、朝から冷たい雨が降っています。4月に開業して12月になるまであっという間だったと思いつつ、こんな雨の日にはクレール=マリ・ル・ゲのモーツァルトとハイドンのピアノ・ソナタ集を聴いてます。

これはモーツァルトイヤーの2006年から録音が開始され、2008年にこの第3集が発売されてぱったりと音沙汰のなくなったシリーズです。ル・ゲは超絶技巧?が何かと話題になっていたピアニストですが、ハイドンとモーツァルトでは初期と成熟期の作品を交互に織り交ぜながら演奏するスタイルを取っており、そこには「ミラー・ゲーム」という副題とともに意図的なものがあるようです。少し独特でゆったりとしたテンポで弾かれるハイドンは聴きやすく、気に入っています。モーツァルトもK.333など軽やかな曲でも残響の多い音でしっかりと演奏しており、雨のクリニックには最適な1枚だと思います。続きが出ないのは残念ですが、クラシックでは全集にならずに終わるシリーズも多いので…やっぱり売上でしょうか?



2014年11月27日木曜日

The Junior Mance Trio - Junior

ジュニア・マンスといえばこのアルバムというくらい有名な1枚。Wikipedia(日本語のはないようです)によると現在もご存命で86歳とのこと。ジュニア・マンスというとスウィングとかソウルフルとかブルージーいう枕詞がかならずついているのですが、最近の良い意味での枯れた味わい深い演奏の対極にあり、イメージそのままなのがこのアルバムです。初めて聴いた時に「これがジャズなんだなー」と思わせるピアノは流石です。かと言ってうるさく響くこともなく、晩秋の午後のピッタリのアルバムです。1曲目《A Smooth One》の冒頭からカッコイイ節回しにやられます。マンス先生をいままで熱心に聴いていなくてすみません…という気持ちになります。《Love for Sale》は軽妙洒脱、マンスオリジナルの《Jubilation》、《Blues for Beverlee》はスイング感が心地よく、《Junior's Tune》のブルージー感はいかしています。ディジー・ガレスピーの《Birk's Works》ではややかしこまったピアノで、これもなかなか聴き応えあります。そういえば、最近買い直した24bitリマスター盤には54年録音の《Hot Springs》と《111 East Ontario》が入っていました。




2014年11月20日木曜日

Dorothy Ashby and Frank Wess - In a Minor Groove

ジャズ・ハープのパイオニア、ドロシー・アシュビーから1枚。彼女はフルートのフランク・ウェスとの共演作が多く、アルバムを聴いただけではフルートが目立つためハープの存在を忘れがちになりますが、モーツァルトの協奏曲にもあるように、フルートとハープの編成はとても相性が良く、心地良く響きます。ただ優雅なロココ調ではなく、ブルージーですが…。1958年作のこのアルバムはプレスティッジ・レーベルらしいかっこよいジャケ写ですが、ドロシーのハープとウェスのフルートはスインギーとは言いながらもどこかのんびりとしたところがあり、午後の診察室には最適です。ちょっとしたカフェの気分…かな?曲も大橋巨泉の意訳?誤訳で有名な《You'd be so nice to come home to》や加トちゃんの「ちょっとだけよ、あんたも好きねぇ」で流れるラテンの名曲(曲調は違いますよ!)《Taboo》、《Bohemia after dark》などどこかで聴いたことのある名曲ばかりで構成されていて、ドロシー・アシュビー入門には最適だと思います。