今年の5月は関東地方でも日照時間が長く、気温の高い日が続きました。そのためか虫刺されで受診される患者さんが例年よりも多い印象があります。6月の梅雨時期でもその傾向は続いており、「子供や妊婦の方でも安心して使えるおすすめの虫除けスプレーはありますか?」と聞かれることも増えています。そこで、肌に優しく、安全に使用でき、効果も高い虫除けスプレーを紹介していきたいと思います。
ディート(DEET;N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)
一般的によく用いられている忌避剤(虫除け剤)で、ダニや蚊に対する効果が高く、比較的安全なため日本でも虫除けスプレーによく使用されています。しかし、忌避剤としての効果が高い反面、皮膚に直接ふりかけるため接触皮膚炎(かぶれ)や蕁麻疹を引き起こすことが知られています。さらに妊婦に使用することで精神遅滞、感覚運動強調障害、顔面奇形など胎児への影響も報告されています。そのため、使用の際は子供や妊婦の方への使用は気をつけなくてはいけません。
子供だけでスプレーするのは避け、眼や口などにスプレーがかかるのを避ける必要があります。傷がある肌に使用することは避けたほうが良いと考えます。日本では濃度が12%までのものしか販売していませんが、外国製のものだとそれよりも高い濃度のものがありますので濃度もしっかり確認することが必要です。
カナダでは高濃度(30%以上)のDEET販売は禁止されており、子供には以下の注意をして使用するように勧告されています。
6か月以下:使用禁止
6か月〜2歳:低濃度(10%以下)1日1回、顔・手は使用しない、長期使用不可
2歳〜12歳:低濃度(10%以下)1日3回まで、顔・手は使用しない、長期使用不可
参考:http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/archiv/pesticide/repellent/deet.htm
(一部改変して記載しています)
虫除けスプレーとしては効果が高いので、キャンプ、バーベキューなど虫が多くいる場所で活動するときには使用するのに適していると思います。
一方、毎日の生活で虫に刺されるのを忌避したい場合、どのような成分のものを使用したら良いのでしょうか?
イカリジン
1986年ドイツのバイエル社が開発した忌避剤であり、DEETに次ぐ効果があると言われています。1998年ベルギーで初めて承認されてから、現在までにアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパをはじめ54カ国以上で承認されているものです。日本でも昨年から今年にかけて発売されています。イカリジンは昆虫の触角の感覚子上に存在する受容体に作用し、人などの吸血源の認知を阻害することで忌避効果を発揮します。蚊成虫、ブユ(ブヨ)、マダニについては10%DEET製剤と同様に100%の忌避率が得られていることが確認されており、6時間程度の効果があります*。アブについても10%DEETと同程度の有効性があります。サシバエとイエダニについては効力試験がされておらず、有効性は明らかではありません。
イカリジンはDEETと異なりほとんどにおいもなく、合成繊維に対する影響もないため服やストッキングの上からも噴霧することが可能です。乳児や幼児に使用するときは大人が手にとったものを皮膚に塗ってあげてください。
いまは「天使のスキンベープ」(フマキラー®)、「虫除けキンチョールDF」(キンチョール®)などありますので、試してみてはいかがでしょうか?
*2015年3月6日 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会議事録より抜粋
天使のスキンベープ |
虫除けキンチョールDF |